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2017年11月6日掲載

「心不全の予防と早期発見」

 きょうの話題は「心不全」です。多くの方は心不全という言葉をご存じだと思います。最近、心不全が増えている、というニュースを耳にした人も多いのではないでしょうか。

 では心不全とは何でしょうか。心不全は「肺炎」や「胃がん」「心筋梗塞」などとは違って、一つの病気を示す「病名」ではありません。いろいろな病気が原因となって、心臓が十分働くことができなくなって生じた「状態」を表す言葉です。

 心不全の原因となる病気には、高血圧や虚血性心疾患、弁膜症、不整脈、心筋症、心筋炎などがあります。これらの病気の影響で心臓の働きが悪くなると心不全になります。心臓の働きが悪くなると体には二つの影響が出てきます。

 一つ目は全身に送られる血液が少なくなることです。このため疲れやすくなったり、ちょっとした運動でも足がだるくなったりします。

 二つ目は血液が心臓に戻りにくくなるために、さまざまな臓器に血液がたまってしまうことです。肺に血液がたまると息が苦しくなりますし、足に血液がたまるとむくみが出てきます。

 最近、心不全患者の増加が社会問題化しています。2030年には日本の心不全患者数は130万人を超えると予測されています。国民の100人に1人は心不全ということになります。

 「パンデミック」とは本来、感染症の爆発的流行を表す言葉ですが、心不全学会などでは「このままでは心不全患者が日本中にあふれかえる『心不全パンデミック』が到来する」と警鐘を鳴らしています。

 心不全パンデミックを防ぐためにはどうすればいいでしょうか。心不全に対する適切な治療も重要ですが、それ以上に予防と早期発見が必要です。

 心不全の予防のためには前に述べたような心不全の原因となる病気を予防し、きちんと治療することが第一です。特に高血圧の予防と治療は重要です。さらに(1)塩分を制限する(2)肥満を避ける(3)適度な運動をする(4)過労を避ける(5)禁煙する−など生活習慣の改善も必要です。

 心不全の悪化を防ぐためには早期発見も重要です。最近疲れやすいと感じたり、階段を上ると息切れや動悸(どうき)がしたり、顔や足にむくみが生じたりする人は、一度かかりつけの病院などでご相談ください。心臓超音波検査や心不全の重症度をみる血中BNP測定など、外来でできる簡単な検査で心不全の可能性を調べることができます。

 日本心臓財団は、心不全の原因の一つである弁膜症の早期発見キャンペーンを行っています。テレビやラジオのCM、新聞広告を展開中です。息切れがある「上杉謙信」に「武田信玄」が早めの「検診」を「進言」するというストーリーで、サンドウィッチマンのお二人が声で出演されています。興味がある人は、インターネットで「謙信と信玄、検診の進言」と検索してみてください。


(長崎市小江原2丁目)小江原中央病院 理事長  川原 史生

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