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2018年2月5日掲載

「骨粗しょう症と骨折」

 最近CMなどで「いつのまにか骨折」という言葉を耳にすることがあると思います。その原因となるのが骨粗しょう症です。

 骨は成長とともに大きくなり、成人に達するころには骨格が完成します。その後も、古くなった骨細胞を壊して新しい骨細胞に置き換えることを繰り返しながら、強度を維持しています。破壊と再生のバランスに障害が起こり、破壊が再生を上回る病態が持続すると骨の強度が低下し、骨量が減少していきます。これを骨粗しょう症といいます。

 骨粗しょう症になる原因で最も多いのが、閉経後の女性ホルモンの減少と加齢です。1対8で女性に多く、65歳以上の女性では約60%が骨粗しょう症であると推定され、高齢化に伴い患者数は年々増加しております。閉経前は女性ホルモンが骨を壊す細胞の活動を抑制していますが、閉経により女性ホルモンが減少すると、骨を壊す活動が活発になってしまいます。50歳ごろを境に急激に骨密度が減少していきます。

 骨粗しょう症になると軽微な力でも骨折しやすくなってしまいます。痛みがなくても、身長の低下や背中が曲がったと感じるときは、微小骨折(マイクロフラクチャー)の可能性があります。ただ痛みがないので未治療の人も多く、薬物治療を受けているのは20〜30%程度にすぎません。

 骨折がよく起こるのは腰、股関節、手首の骨です。中でも股関節の骨折を起こした場合は、手術治療が第一選択となります。手術しなければ車いすやベッド上の生活を余儀なくされ、社会復帰が困難となってしまうからです。それでも術後1年以内に死亡する確率は10〜30%あるといわれています。術後の体力低下や認知症の進行、肺炎などの合併症が原因です。

 日常生活の動作に制限のない健康寿命(男性は平均71歳、女性は同74歳)を伸ばすために、まずは診察を受け、骨密度を測定してください。その結果によって治療が必要かどうかが決定します。一般成人と比較した骨密度の割合(YAM値)が80%以上であればまずまず良好です。70〜80%の間にある場合、過去に軽微な転倒などで骨折したことがあれば治療を開始した方がよいと考えられます。70%以下であれば、急いで治療を開始した方がよいでしょう。

 骨粗しょう症の治療は大きく分けて食事療法、薬物療法、運動療法の三つになります。食事療法はカルシウムやマグネシウム、ビタミンDやビタミンKの摂取が大事になってきます。ただし、食事では補えないことが多く、ほとんどの場合、薬物療法が治療の大部分になります。薬でこれらの栄養を吸収しやすくしたり、骨の細胞を刺激して再生が破壊を上回る状態に戻したりする治療を行います。(ただし薬物療法が5年以上の長期にわたる場合は、骨が硬くなりすぎて骨折を起こすことがあり、休薬などが必要なこともあります)

 さらに整形外科でのリハビリテーションで筋力やバランス能力を向上させ、転倒を予防し骨折のない健康な生活を目指しましょう。

(長崎市三芳町)諸岡整形外科 院長  諸岡 聡

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