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2018年2月19日掲載

「耳の日」

 3月3日は「耳の日」です。耳の日は、日本耳鼻咽喉科学会の提案により、難聴と言語障害の人の悩みの解決という社会福祉への願いから、1956年に制定されました。日本耳鼻咽喉科学会長崎県地方部会でも耳の日前後の週末に県内で活動しています。

 皆さんは難聴と言語障害に関して考えたことがありますか。私たちは生まれてから、周りの人、特に親が話す言葉を聞いて言葉を覚えています。ですから聞こえが悪いと、言葉の発達に影響が出ます。早く生じれば障害は大きいですが、早く発見し治療すれば、その影響は少なくなります。

 産科施設では生まれる子の聞こえの簡易検査が行われています(新生児聴覚スクリーニング)。その後、専門病院で約0・1%に両耳難聴が発見されています。両耳難聴の子どもでも、早く補聴器や人工内耳を装用し、聞く力や話す力を練習すると、コミュニケーション能力は高くなります。

 新生児期以降は1歳6カ月児、3歳児健診で簡易的な聞こえの検査が行われます。新生児期以降に生じる難聴の原因には中耳炎があります。急性化膿(かのう)性中耳炎は、発熱や耳痛など、分かりやすい症状があります。しかし、滲出(しんしゅつ)性中耳炎は、痛みを伴わないため、難聴に気づかないことがあります。就学前の子の9割は、滲出性中耳炎にかかるとの報告があります。皆さまのお子さまは、聞き返しは多くありませんか。

 私たちの聞こえはさまざまな原因で低下していきます。国立長寿医療研究センターの調査では、軽度難聴(小雨の音が聞こえない)の有病率は65歳から急激に増え、75歳以上では男性71・4%、女性67・3%という結果です。難聴の原因はすべて解明されていませんが、危険因子は加齢、騒音、遺伝、糖尿病などさまざまあります。加齢以外の因子があると難聴の程度はひどくなります。難聴は治りにくいので、専門医の早めの診断が必要です。

 2015年発表の認知症施策推進総合戦略では、認知症発症の危険因子に、加齢、遺伝、糖尿病、喫煙などとともに、難聴も挙げられています。海外報告では、軽度難聴の人は、約10年後に認知症発症率が正常の人の約2倍、高度難聴(ピアノの音が聞こえない)の人は約5倍という結果でした。

 難聴でなぜ認知機能が低下するか、補聴器使用で認知症が改善されるかなど、現在研究中ですが、耳あか除去や補聴器使用などで、認知症の周辺症状が良くなることを時々経験します。難聴を感じたらぜひ、耳鼻咽喉科を受診してください。

 さて耳の日の講演会が2月25日午後1時、佐世保市中央公民館(同市常盤町)であります。講演の内容は「音の伝わり方と難聴の種類」(佐世保中央病院耳鼻咽喉科・大里康雄部長)、「みみなりが治る?補聴器・人工内耳・耳鳴医療の進歩」(耳鼻咽喉科神田ENT医院・神田幸彦院長)、「難聴は高齢者に何をもたらすか?」(長崎大学病院耳鼻咽喉科・橋晴雄教授)の三つです。補聴器・難聴支援グッズの展示もあります。料金は無料です。聞こえに関心を持っていただく機会です。ぜひご来場ください。


(佐世保市田原町)たかさきクリニック耳鼻いんこう科アレルギー科 院長  ア 賢治

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