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2018年3月5日掲載

「妊娠中から産後の体の動かし方」

 妊娠中の適度な運動は体重増加の防止だけではなく、体力を維持し、ストレス解消や血行増進することでむくみや便秘を改善する効果もあります。妊娠初期は流産しやすい時期ではありますが、そのほとんどが染色体異常など受精卵の原因といわれ、動き過ぎたなどということとは関係ありません。

 そのため、妊娠12週まではそれまでと変わらない運動をしても構わず、妊娠12週以降は、妊娠前の7割ほどに強度を抑えれば大丈夫であると考えられています。妊娠してから新しい運動を始める必要はなく、一番簡単にできるウオーキングなどがお勧めです。

 具体的には、週2〜3回、夕方はおなかが張りやすくなるので午前10時〜午後4時の炎天下は避け、十分な水分補給をしながら1時間以内を目安にするとよいでしょう。さらに体を動かしたいというのであれば、最近では妊娠中でもできるヨガ、エアロビクスやスイミングなども盛んに行われています。特にマタニティー専用クラスであれば、運動開始前後の血圧測定、胎児心拍の確認などメディカルチェックも受けられるので安心です。

 適度な運動によって子宮収縮が促されることはないとはいわれていますが、おなかが張っている妊婦が運動することは流産・早産につながります。あなたの妊娠経過をよく把握している主治医に相談した上で可能なもの、かつ自分の体調に合った、気持ちのいいと感じられる運動を無理のない範囲で行ってください。

 では、産後はどうでしょう。出産後に崩れてしまったボディーラインが気になる方は多いようですが、産後直後は子宮もまだ回復しきっていません。産後の運動は、体力を回復させる運動と、妊娠出産によってゆがんだ体を整える運動がメインです。たくさん動いてカロリーを消費すればいいというわけではありません。

 まずは妊娠で伸ばされ、弱ったおなか周りの筋肉(腹筋)や、出産で緩んだ骨盤内の筋肉(骨盤底筋)に徐々に刺激を与える産褥(さんじょく)体操をお勧めします。産褥体操は産後のママの体調改善を目的としています。劇的な効果は見られないかもしれませんが、その後の骨盤矯正やダイエットの土台になります。

 本格的な運動を始めてよいのは、早くても産後1カ月たった後。1カ月健診で医師から問題ないと判断されてから運動するようにしましょう。一般に、気になる妊娠太りで体についた脂肪は通常よりも燃焼されやすく、この脂肪が一度定着すると落とすのはなかなか難しいといわれています。体力が戻ったら産後6カ月を目安に集中的に行うとよいでしょう。

 しかし、この期間は育児も同時にしなければいけない忙しい時期でもあり、今後の体調にも悪影響を及ぼすこともあります。結果を出すスピードよりも、決して無理をすることなく継続的に行うことが重要です。くれぐれも食事を極端に減らしたり、極度な運動をしたりしないよう、長期目線で健康的なダイエット計画を立てましょう。

(長崎市石神町)まつお産科・婦人科クリニック 院長  松尾 敦

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