2018年4月16日掲載
「ホスピスの相談窓口」
2007年に「がん対策基本法」が制定されて10年がたち、がんに対するイメージも随分と変化していると思います。
その間、新たな治療法が次々と報告され、治療の選択肢は広がってきています。また、治療期間が長くなってきており、5年生存率も向上しています。ただ、がんと言ってもその病名は数多くあり、たどる経過もさまざまです。いずれ治療の終わりを告げられることになると、「見放され感」にとらわれ、その衝撃の大きさは怒りとなって表出されることもあるようです。
そのような中、ホスピスがある当院を紹介され、面談に来られて、今後のことを相談することになります。入院となる人、緩和外来に通うことになる人、在宅で過ごすことになる人など、本人、ご家族の意向に沿ってお話を進めていきます。
相談を受けていると、ホスピスというものに閉ざされた暗いイメージを持たれていて、「死にに行く所」「いったん入院すると帰ることができない」などの言葉を聞くこともあります。
ホスピスの役割の一つとして重要なのは、がんに伴う症状緩和を行い、同時に残された時間を本人らしく有意義に過ごしていただくということです。入院前の面談をご家族(本人)とさせていただく中で感じるのは、本人が自身の病状について情報を正確に知り得ることができるならば幸いですが、そういう環境にいる人ばかりではなく、情報が得られないがゆえに悩みが何倍にも増して一人で抱え込み、苦しんでいる人もいるということなのです。
治療のこと、費用のこと、家族のこと、仕事のこと。今後、どのような経過をたどり、いったい自分はどんな状況になっていくのか。それがいつ、どのタイミングで来るのか、自分の病気についてどこまで知りたいのか、介護保険や財産整理のこと、言い残す言葉、意思決定支援の代理決定者は誰にするのか、成年後見人制度の利用は−。
考えたり決めたりしなければいけない数多くのことがあります。残された時間と考え合わせながら、これらのことを進めていくのは並大抵のことではないと思います。
さまざまな決定に際して基準となるのは、まず自分の状態をしっかり理解しているかどうか、ということになると思います。「自宅に帰りたいが、元気になってから帰る」と言いながら、帰る機会を逸してしまうという場合もあります。
がんの告知は、入院に際し必須ではありません。しかし、いろんな意思決定をできる人であるならば、告知し、自身の病状を理解した上で、本人が思うように時間を使うことが大切なこととなります。ただし、これは全ての人に当てはまるものではありません。それぞれの価値観、人生観によって違うのが当たり前なのです。
故に、がんになったらどのような生き方をしたいかということを、家族や周辺の人に話しておくことが大事なのかもしれません。
ホスピスの相談窓口としては、このようなことを踏まえながら、精いっぱい対応させていただいています。
(長崎市出島町)出島病院地域医療連携室 看護師 松尾 尚子
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