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2018年5月21日掲載

「心療内科の受診」

 ストレスを感じると、誰しも気分が落ち込んだり、食欲がなくなったり、眠れなくなったり、場合によっては頭痛、動悸(どうき)、だるさといった身体症状が現れたりすることがあります。

 そのまま特に治療を受けなくても、時間がたてば元のように元気になることも少なくありません。しかし、症状によっては風邪と同じで、無理を続けて治療が遅れると深刻な状態に陥ることもまれではありません。

 身体疾患であれば、その症状に応じた診療科をすぐに受診することに特にためらいはないでしょう。しかし、一般的に心療内科を初めて受診するには、内科や小児科、外科などと比べるとハードルが高いように思われます。

 実際、自分が心の病気になってしまうと、周囲から「気の持ち様」「甘えとる」「気合の足らん」「ほっとけば治る」といった(間違った)〓(f321)咤(しった)激励を受けてしまう場合も多いようです。心の病に対する偏見というよりも、この背景には、やはり心の病について一般的に知られていることが少なく、そして日本古来の精神論的な観念や根性論が、根強くあるように思われます。

 もちろんある程度の根性論が必要であることは否定できませんが、そこには限度があります。その限度を超えてしまうと、心や体が悲鳴を上げます。

 発熱や頭痛、腹痛などの身体症状は本人にも周囲にも比較的受け入れやすく、休養をとったり医療機関を受診したりしやすいと思います。しかし心の悲鳴が問題です。前述したように、眠れない、食欲がない、不安が強い、集中できない、意欲が湧かない、出社・登校したくないなどの心の悲鳴は、目に見えない部分が多く、軽視されがちです。場合によっては、協調性がない、わがまま、周囲に悪影響を及ぼすなどと、いわれのない非難をされることさえあります。

 真面目で、責任感が強い人ほど、「周囲に迷惑をかけられない」などのプレッシャーを背負い込み、心の悲鳴に無理やりふたをして、さらにストレスをため込む悪循環に陥りがちです。こうなってしまうと極めて危険な状態であり、取り返しのつかないことが起きかねません。

 こうなる前に一番望ましいのは、専門家である心療内科を受診し、相談をして一緒に考えていくことですが、このハードルがどうしても高ければ、とにかく一人で抱え込まず、家族や信頼できる知人に助けを求めることが大切になってきます。

 繰り返しますが、心の病は特別なことではなく誰にでも起こりうるものであり、早期の受診治療が必要です。

 どうぞ、一人で抱え込まず、心が悲鳴を上げたときは決して無視することなく、気軽に近くの心療内科に相談してみてください。

(西彼長与町、イオンタウン長与内)
かたやまハートケアクリニック 副院長  片山 二郎

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