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2018年6月4日掲載

「慢性腎臓病」

 皆さんは、腎臓の調子が悪くないかを調べる方法をご存じでしょうか。

 「沈黙の臓器」ともいわれる腎臓の病気は、初期段階では自覚症状がほとんど現れないことが特徴です。健診を長期間受けていなかった人が、「体がきつい」「食欲がない」という症状で病院を受診してみると、本人が気付かないうちに腎臓病がかなり進行していたというケースもあります。

 このようなことを防ぐために、できるだけ早く腎臓病に気付き、治療を始めることが大切です。では、どのようにして腎臓病があるかどうかが分かるのでしょうか。

 腎臓病の有無は、尿検査と血液検査で分かります。尿検査で「尿たんぱく」を認める場合は、腎臓が障害されているために腎臓からたんぱくが漏れ出ている可能性があります。
 また、血液検査では、「血清クレアチニン」から腎機能の指標として「糸球体濾過(ろか)量(eGFR)」が算出できます。このeGFRの数値が60未満の場合は、腎機能が低下していることを意味します。

 これらの検査により、尿たんぱく、腎機能の低下のいずれか、または両方があり、それが3カ月以上持続すると慢性腎臓病(CKD)と診断されます。日本の成人人口における慢性腎臓病の患者数は約1330万人と推計されており、これは成人の8人に1人に当たる数となります。

 慢性腎臓病は、透析治療を要する末期腎不全に進展する可能性があるだけでなく、慢性腎臓病の進展により動脈硬化が進行し、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)も起こりやすくなることもわかっています。

 末期腎不全への進展を抑制し、心血管疾患の発症を予防するためには、慢性腎臓病を早期に発見し治療する必要があり、そのためには定期的に検尿や、血液検査で腎機能の目安であるeGFRを調べることが重要です。
 また、慢性腎臓病の危険因子と心血管疾患の危険因子は、多くが共通しており、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドローム、喫煙などがあります。これらの危険因子に対して、早めにアプローチしていくことも大切です。

 皆さんは昨年10月にNHKで放送された「人体 神秘の巨大ネットワーク第1集 “腎臓”が寿命を決める」を見ましたか? タモリさんも出演していたこの番組で、腎臓の働きが低下すると老化現象にも関わってくることが紹介されました。腎臓を守って健康長寿を手に入れるために、ぜひ定期的な健診を受けて、慢性腎臓病を早期に発見しましょう。

(長崎市新地町)長崎みなとメディカルセンター
腎臓内科 主任医長  浦松 正

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