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2018年6月18日掲載

「ABC検診」

 わが国における死因原因の1位はがんで、臓器別では、肺がんに次いで胃がんが2位です。

 胃がんの発見には内視鏡検査が最も有用ですが、対象となる全ての人に内視鏡検査を行うことは、受診される人の時間的制約や医療資源などの問題から現実には困難です。

 ピロリ菌感染による慢性胃炎が、胃がんの一番大きなリスクとされています。このため、ABC検診における血液検査だけで、ピロリ菌感染の有無をピロリ菌抗体により、慢性胃炎の程度を消化酵素のもとのペプシノゲンにより、それぞれ調べて将来の胃がんのリスクが判定できるようになったことは朗報と言えます。

 判定結果は、A、B、C、Dの4群に分けられます。A群はピロリ菌が陰性で胃炎が無い人、B群はピロリ菌が陽性で軽い胃炎がある人、C群はピロリ菌が陽性で胃炎が進んだ人、D群はピロリ菌がすめなくなるまで胃炎が進行した結果、ピロリ菌が陰性の人です。

 A群↓B群↓C群↓D群の順で胃がんができやすくなるため、胃がんのリスクが極めて低いA群以外の人は、内視鏡検査による定期的な検査が必要です。

 ピロリ菌の除菌により、胃がんの発生が抑制されることは知られています。ピロリ菌の感染が証明された際は、除菌治療を行いましょう。

 初回の検査時に胃がんが見つからなくても、数年後、10年後、20年後には見つかるかもしれないので、内視鏡による経過の観察も大切です。

 「胃がんのリスクがある」と判断された人は、医師と相談して、内視鏡検査を将来も継続していくことが胃がんの早期発見につながります。

 ABC検診は、公費による補助があり、対象となる人には自治体から「胃がんリスク受診券」が届くようになっています。

 ただし検診を受ける前に注意してほしいことは、食道、胃、十二指腸の病気で既に医療機関にかかっている人、胃酸を抑える薬を服用している人、胃の手術を受けた人、腎臓が悪い人、ピロリ菌の除菌治療を受けたことがある人は、結果が正しく出ない可能性があり、本検診の対象にはならない場合があります。思い当たる人は、検診を受ける前にあらかじめ医師と相談してください。
 また、胃が痛いなど既に自覚症状がある人は、検診ではなく、直接医療機関への受診をお勧めします。
 胃がんは早期に発見されれば、内視鏡による治療で完治が望めます。この検診の普及が、将来の胃がん死亡率低下につながるものと期待されています。

 本検診の目的が、今ある胃がんの発見ではなく、将来における胃がんのできやすさのリスクのグループ分けであることを理解していただいた上で、「胃がんリスク受診券」をお持ちの人、この検診に興味を持たれた人は、ぜひABC検診を受けられることをお勧めします。

(長崎市為石町) おにつか内科・消化器科 理事長  鬼塚 康徳

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