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2018年7月2日 掲載

「食物アレルギー」

 乳幼児の10人に1人は食物アレルギーがあると言われています。
 原因となる食物は、鶏卵、牛乳、小麦、大豆の順に多く、食べることで、じんましん、まぶたの腫れが出現します。鼻水や嘔吐(おうと)、下痢、喘鳴(ぜんめい)(ぜーぜー)を起こすこともあります。ひどいときにはアナフィラキシーショックといって、生命の危険を伴うこともあります。3歳までには50%、6歳までには70%が治ると言われますが、最初の診断と対応はどうしたらいいのでしょうか。

 診断を確定させるには二つのことが必要です。一つ目は特定の食品を食べたときに症状が出ること、二つ目は、その食品に感作されていること(血液検査や皮膚試験で陽性になること)です。

 ここで注意すべきことは、血液検査で陽性であっても、食べたときに必ずしもアレルギー症状が出るわけではないということです。食べたことがない食品については、血液検査で症状が出現する確率を予測はできても、本当にアレルギーがあるのかどうかは病院での経口負荷試験(食べてみて確認する検査)をする必要があります。

 対応の基本になる考え方は、「スキンケア」と「必要最小限の除去」です。スキンケアに関してですが、近年、食物アレルギーは生後早期の皮膚の湿疹から始まると言われています。部屋のホコリ(ハウスダスト)の中には、料理や菓子などの鶏卵、牛乳などの食物アレルゲンも含まれており、赤ちゃんの荒れた皮膚に付いたときに感作されると、離乳食で食べたときにアレルギー症状が出ることがあると言われています。そのため、食物アレルギーの予防や治療として、生後早期からの適切なスキンケアが重要です。

 次に、成長期のお子さんは、バランスよく栄養を摂取することが大切であるため、「必要最小限の除去」が勧められています。以前は血液検査で陽性であれば、長い期間、特定の食品を除去、あるいはアレルギーに対する不安のために1歳までは鶏卵や牛乳は摂取させない、鶏卵アレルギーがあれば鶏肉も食べさせないといった考え方もありました。

 しかし今では、血液検査の結果だけで除去することや、症状もなく摂取を遅らせることに意味はないことが分かっています。

 食べると症状が出る食品だけを除去します。加熱など加工した食品のほうが症状は出にくいため加工品を少量から摂取するなど、食べられる範囲を広げることが重要です。健やかな肌を保てるように管理されていれば、離乳食の開始や進行を遅らせる必要はありません。抗原性の少ない米や野菜類の新鮮な食材を十分に加熱して、少量から与えていきましょう。
新しい食材を与えるときは一つずつにすること、もし症状が出たときにすぐに受診できるよう、平日の昼間に始めることも大切です。

 幼稚園、保育園における対応としては、誤食事故防止、安全性が最優先のため、原因となる食品は完全除去が基本です。園で個別対応が可能であれば、かかりつけ医の診断による書類を基に除去する範囲を決めましょう。

(長崎市万屋町)やなぎクリニック 院長  蛛@忠広)

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