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2018年8月6日 掲載

「お酒と泌尿器疾患」

 毎日暑い日が続き、仕事終わりのビールに幸せを感じる季節となりました。お酒には、リラックス効果や食欲増進、コミュニケーションの潤滑剤的な役割があり、酒飲みにとってはなくてはならないものです。

 一方で健康への悪影響も明らかになってきています。世界保健機関(WHO)の評価(2007年)では飲酒は、口腔(こうくう)、咽頭、喉頭、食道、肝臓、大腸と女性の乳房のがんの原因となるとされています。そこで今日はお酒と仲良く付き合うために泌尿器科疾患の面からお話したいと思います。

 【前立腺がん】
 飲酒とがん発生率に関連性はないようですが、過度の飲酒群は進行がんの危険性を1・5倍増加させるようです。

 【ぼうこうがん】
 飲酒との関連性はありませんが、お酒を飲んで顔が赤くなる人では危険性が高まる可能性があります。

 【腎臓がん】
 うれしいことに、適度な飲酒が腎臓がんの発生を予防する効果があることが明らかになりました。お酒の種類は関係ありませんが、たばこを吸わない人限定です。

 【前立腺肥大症】
 お酒によって前立腺がうっ血し、腫れることで、尿道の圧迫が強くなります。またお酒の利尿作用でぼうこう内に尿が普段以上に多くたまるため尿を押し出す力が弱くなり、尿の出方が悪くなります。60歳以上の方の急性尿閉(おしっこがでなくて苦しい)の一番の原因です。普段から尿の出の悪い方では、飲酒時のトイレの我慢と過度の飲酒は厳禁です。

 また飲酒は睡眠を浅くし、利尿作用と相まって夜間頻尿も悪化させますので注意が必要です。

 【尿路結石】
 お酒による利尿作用後の脱水状態と、アルコール中のプリン体や尿酸の影響によって、飲酒は腎臓結石生成の大きな原因となります。結石の既往のある方は、飲酒時にはお酒と同量の飲水を心がけてください。

 【慢性腎臓病】
 肝臓や、すい臓の疾患を合併していない場合、適量のお酒なら、血流がよくなり慢性腎臓病の進行を抑えて、心血管系の予防になる可能性があります。おつまみの塩分やタンパク質の制限を守ることはもちろんのこと、過量の飲酒はメタボや高血糖の一因となり逆効果であることを肝に銘じてください。

 大切なことは、適量を守り節度ある飲酒を心がけることです。

 それでは適量とはどのくらいでしょうか。国の定めた適量は1日当たりアルコール20グラムとなっています。ビールなら500ミリリットル、ワインなら200ミリリットル、日本酒1合、焼酎100ミリリットル程度となります。さらに週2日以上の休肝日も必要です。

 飲酒によるからだへの悪影響を理解し、病気の早期発見と予防のために、早め早めに検診を受けることも非常に重要です。お酒と上手に付き合いながら、健康で、豊かな人生を楽しみましょう。酒飲み泌尿器科医でした。

(長崎市新地町)長崎みなとメディカルセンター 主任診療部長  渡辺 淳一

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