>>健康コラムに戻る

2018年9月17日 掲載

「変形性股関節症」

 股関節は、体幹と下肢をつなぐ大きな関節で、単体では人体最大の関節です。体幹と下肢をつなぐ要であり、さまざまな日常生活を行う上で大変重要な関節といえます。そのため正常な股関節は、大変安定した状態を保っています。

 変形性股関節症とは、さまざまな原因によって関節軟骨が変性、消失し、強い痛みや機能障害を起こす状態の総称といえます。日本人の多くは発育性股関節形成不全による寛骨臼(かんこつきゅう)の発育障害によって続発するものが原因の80%を占めているといわれています。

 正常であれば非常に安定した関節である股関節が、寛骨臼が浅いことによって股関節の不安定性が生じてきます。それによって、軟骨が徐々に変性、消失していくことが大きな原因です。圧倒的に女性に多いのが特徴です。

 変形性股関節症は、進行性の病気であり、寛骨臼形成不全だけがある「前期」、関節軟骨が部分的に傷ついている「初期」、関節軟骨が一部消失して骨と骨が接触し始める「進行期」、関節軟骨がほとんど消失して、骨の変形が著しい「末期」と進んでいきます。

 治療法は、鎮痛薬、リハビリ、体重コントロールなどを行っても痛みの改善がない場合、手術的加療を行います。特に形成不全の程度が強い人は、ほとんどの方が最終的には手術的治療が必要になってきます。

 若年齢(20〜40歳代)で比較的初期の状態であれば、骨切り手術を行うのが一般的です。この手術は初期の状態で、若いうちに行えば行うほどその治療成績が良いといえます。

 50歳前後以降で病期が進行している場合は、人工股関節置換術(THA)の適応となってきます。THAは1960年代ごろより急速に世界的に行われるようになってきており、現在では国内でも年間約6万件の手術が実施されています。THAは関節由来の疼痛(とうつう)を劇的に改善させ、また、ある程度の脚長補正も可能で、大きな福音を患者さんにもたらすことが可能です。整形外科領域の手術の中でも最も成功した手術治療法の一つといえます。近年では、早期の社会復帰を可能にする最小侵襲手術への取り組みも盛んに行われています。

 THAの合併症は、脱臼、ゆるみ、感染などがあります。これらの合併症は人工関節の材質および手術手技の進歩によって以前と比べるとかなり減少してきていますが、注意は必要です。専門医への定期的な検診を行うことが大切です。

 立ち上がる時や階段上り下りの時、おしりや鼠径(そけい)部、大腿(だいたい)部などに痛みを頻繁に感じたり、痛くてあぐらができなかったりといった症状がある方は、一度専門医への受診をお勧めします。

(長崎市虹が丘町)虹が丘病院 整形外科  穗積 晃

>>健康コラムに戻る