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2018年11月5日 掲載

「周産期医療支援システム『すくすく』」

 今回は、長崎県周産期医療支援システム「すくすく」をご紹介します。

 妊婦健診では、健診結果を毎回、母子手帳へ記録していきます。この記録にはさまざまな役割があり、いろいろな職種の人がお母さんと子どもさんの健康のために情報を活用しています。

 「すくすく」は簡単にいうと、この母子手帳の記録をITの力を借りて、保存し、活用しようというシステムです。そう言うと、何だか母子手帳の中身をのぞき見されるような、落ち着かない気分になるかもしれませんが、大丈夫です。「すくすく」の情報はお母さんが許可した人しか、見ることができないようになっています。情報のやりとりも、完全に外部からの接続を遮断された安全なネットワーク内で行われています。

 県内の新生児集中治療室を備えた病院には、全て「すくすく」が入っており、妊婦さんを高次病院へ搬送する場合に、一瞬でその情報を送ることができます。また万が一、地震や水害などの災害が起こった場合でも、妊婦健診の情報を他の医療機関へ引き継ぐことができます。これが「すくすく」の第1の特徴です。

 さて、母子手帳の妊婦健診結果は、数字や記号だけなので、少し見にくいと感じることはないでしょうか?
「すくすく」では、分かりやすいグラフやイラストで、現在、自分やおなかの中の赤ちゃんがどういう状態にあるのかを説明できるようになっています。そのため、お母さんの血圧や尿検査、そして自分の体重がどれぐらい増えているのかも一目瞭然です。このように、妊婦健診記録を分かりやすく提供することが「すくすく」の第2の特徴です。

 「すくすく」の母体体重増加の目安は、現在、厚労省の推奨値を使用していますが、「すくすく」でデータが集まってくると、面白いことが分かりました。「すくすく」の記録から、健康な妊婦さんが、実際にどれぐらい体重が増えたのかのデータを集めると、平均で12〜13キログラムの体重増加であることが分かりました。この値は厚労省の推奨値より少し多めです。これは長崎県の妊婦さんが、たくさん食べることを意味しているかもしれませんが、一方、厚労省の推奨値が実態とずれている可能性もあるのです。

 このように、データが集まることによって、健康な赤ちゃんを産むためにはどうしたら良いか? 元気に産まれた赤ちゃんが、その後も本当に健康にしているのか? など、子どもが健康に育つために、妊婦さんの健康管理をどうすれば良いのかが分かるようになってきます。これが「すくすく」の第3の特徴です。

 大村市では、「すくすく」のデータを用いて、妊婦健診を受けられない方などの支援に乗り出しています。また今後、小児健診や予防接種も記録できるように計画しています。お母さんと子どもたちへの切れ目のない支援のために開発された「すくすく」へのご協力を、これからもよろしくお願いいたします。

(島原市湊町)山崎産婦人科医院 院長  山崎 健太郎

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