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2018年12月17日 掲載

「がんのリハビリ」

 みなさんは、リハビリテーション(以下、リハビリ)についてどのようなイメージをお持ちでしょうか? おそらく、骨折や脳卒中後のリハビリをイメージする方が多いのではないでしょうか。
いまや、リハビリの対象は“肺や心臓の病気をもつ患者さん”へ、さらに、“がん患者さん”にも広がっています。 今回は、「がんのリハビリ」って? その疑問にお答えします。

 がんになると、がんの症状や治療(手術・抗がん剤・放射線治療)の副作用などで、体力が落ち、以前の生活を続けることが難しくなることがあります。しかし、がんになっても、自分らしい生活は続けたいものです。その手助けとなるのが「がんのリハビリ」です。

 がんと診断された時から、「がんのリハビリ」は開始されます。必ずしも身体の機能が損なわれてから開始するとは限りません。自転車こぎや体幹、手足の筋力トレーニングを行うことで、治療中の体力を維持できる場合があります。

 私が3年前から担当している患者さんからは、「がんのリハビリを受ける前は、治療が終わって退院すると、100メートル歩くだけで息切れしていた。リハビリは自分にはまだ必要ないのではないかと思っていたが、取り組んでみると、退院後、歩いても疲れにくくなった」という感想をいただきました。この方は現在も、がん治療とリハビリに精力的に取り組まれています。

 がんの治療が継続しにくくなっても、「がんのリハビリ」は続けられます。

 がんが進行し、足の筋力が落ちて歩けない患者さんが、自宅退院を希望されました。この方の場合、車椅子が使えるようになることを目標とし、車椅子に移る練習、家族への介助方法の指導や家屋改造(段差の解消や手すりの設置)などを行いました。このように、患者さんの希望や体力に合う目標をかかげて、リハビリを行うことができます。

 「がんのリハビリ」を行う時に、悩ましいことがあります。骨転移(がんが骨に転移したもので、正常な骨と比べて弱く骨折しやすい)の患者さんへの対応です。骨転移のある患者さんのリハビリは、過度に行うと骨折を起こすことがあり、逆に、慎重になり過ぎると生活を支える筋力の維持が難しくなります。

 私たちの病院では、骨転移の患者さんの骨折リスクをチェックし、どのくらい動いてよいか判断してから、リハビリを行っています。医師、リハビリスタッフ、看護師で一緒に検討し、リスクの高い患者さんについては整形外科医へ手術の可能性やコルセット装着の必要性などを相談しています。

 がんと診断されても、自分らしい生活を続けたい、体力や身体の機能を維持したい。そのために「がんのリハビリ」が少しでもお手伝いできれば幸いです。

(長崎市茂里町)日本赤十字社長崎原爆病院リハビリテーション科
理学療法士  石丸 将久

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