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2019年1月21日 掲載

「人生会議」

 昨年1月15日の長崎新聞「健康欄」に、長崎市医師会の土屋知洋理事が「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と題して寄稿されたのを覚えてますか? ACPとは人生の最終段階における医療・ケアに関して、本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合って意思決定を行うことです。

 厚生労働省はACPの普及を進めており、この取り組みを広く一般に理解してもらうために、昨年11月にACPの愛称を「人生会議」に決定しました。また、11月30日(いい看取(みと)り・看取られ)を「人生会議の日」とし、皆さんに考えてもらう日としました。

 いい看取り・看取られ方とは具体的にどのようなものでしょうか? 医療・介護の職に携わっている者は多くのご縁の中で、人の最期に立ち会わせていただく機会があるため、いろんな方の生き方・逝き方を拝見する事ができます。人生いろいろ、思いもいろいろ、生き方・逝き方も人それぞれです。

 昭和56年以降は病院や有床診療所などの医療機関のベッドで最期を迎える方が大半でしたが、平成20年代に入ってからは老人ホームやグループホームなどの介護系施設・自宅など入院以外での生活の場で最期を迎えるという選択肢が広がってきています。
何処(どこ)で最期を迎えるかというのはもちろん重要な選択です。しかし、それまでをどう生きて、どう逝くかという事がもっと大事な選択であると思います。
昨年、政府は「人生100年時代構想」を提唱しました。正直100歳まで生きてどれくらいいい事があるのかはわかりませんが、生きている限りは「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを最期まで続ける」事が重要です。
皆さんがお住まいの中学校区単位で医療と介護と行政と住民の皆さんがしっかり連携をすることによる「地域包括ケアシステム」が有効に働く事で、その望みがかなうかもしれません。

 地域包括ケアシステムは発足当初、団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年へ向けて、高齢者の生活をいかに支えるかを目的としましたが、このシステムは何も高齢者に限った事ではありません。障害者や難病を抱えたお子さんの生き方を地域でどう支えるかという問題も含まれています。
病気や障害は大病院だけで支える事が難しい現在、地域の病院やかかりつけ医、かかりつけ薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャー、相談支援員などの多職種が皆さんの生き方をお手伝いするようになったのが平成の時代です。

 生きるからには必ず逝くときが待っています。どのような逝き方をしたいのか、決めるのはご自身ですが、その意思をあらかじめご家族や関わる多職種と話し合い、伝えておく事は大切です。
明日何が起こるかわかりません、突然意思表示ができなくなることもあります。 前もって、伝えておくことで、その意思は尊重されます。しかし、人の思いは時に変わります。状況に応じて変わってもいいのです。
その都度都度でご自身の生き方・逝き方を伝えていただく、それが、あなたの『人生会議』なのです。

長崎市医師会 理事  出口 雅浩

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