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2019年2月4日 掲載

「間欠性跛行」

 間欠性跛行(はこう)という症状をご存じでしょうか。あまり聞き慣れない言葉だと思います。歩いている途中で足が痛くなったり、重くなったりして途中で休まないといけない症状で、しばらく休むとまた歩くことができます。ちょっとした買い物へ行くにも休み休みでしか歩けなくなります。

 多くは整形外科の病気である脊柱管狭窄(きょうさく)症が原因で起こりますが、この症状の3割弱の人は、閉塞(へいそく)性動脈硬化症という足の血管病によって起こります。動脈硬化によって足に向かう血管が詰まってしまい、血液の供給がより必要となる歩行時に、足の血行が不足することにより症状が出現します。多くはふくらはぎですが、お尻や太ももに生じることもあります。

 この閉塞性動脈硬化症の診断は簡単で、ABI検査という手足の血圧を同時に測定する検査法によって行います。健康な人では手の血圧に対する足の血圧は同じですが、この病気では低くなります。また、症状の程度によっては超音波やCT検査にて血管のどの部位がどのくらい詰まっているかを調べることも必要になります。重症になるとじっとしているときも痛くなったり、さらには足先に傷ができて治らなくなり、切断しないといけなくなったりする場合もあります。

 動脈硬化が原因ですので高齢や喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などがこの病気を起こしやすい要因となりますが、近年、日本は超高齢化社会になり動脈硬化による病気は増加の一途をたどっています。閉塞性動脈硬化症は同じ動脈硬化を原因とする心筋梗塞や脳梗塞を合併しやすいことが知られており、この患者さんの自然経過を5年間見た報告では、足の症状が悪化したのは2割程度で足の切断まで至ったのは数%にすぎませんでした。しかし、注目すべきは足の症状が安定していても、およそ15%が主に心筋梗塞や脳梗塞などで亡くなられていました。つまり、局所的な足の病気ではあるものの、この病気が見つかったときは心臓や脳といった全身の動脈硬化も見据えた形で医療機関に診てもらうことが重要と言えます。

 その治療として間欠性跛行の場合、まずは運動療法と薬物療法になります。歩いていて痛くなっても少し我慢して歩くことを繰り返し続けると、だんだんと歩行距離が伸びてきます。歩くことによって側副血行という、詰まっているところの周辺にある小さな血管からの血液供給が自然に発達してくることが多いからです。

 薬は血液をサラサラにする抗血小板剤を内服しますが、詰まった血管を元に戻すことはできませんので、症状が強く運動療法や薬物療法の効果が不十分な場合にはカテーテル治療やバイパス手術を行います。

 足は第2の心臓とも言われ、歩くことは健康寿命を延ばす秘訣(ひけつ)です。われわれの日常診療では、この病気で歩けなくなっているのを年のせいと諦めているお年寄りの患者さんもよく経験します。しっかりと歩き続けるためにも、きちんとした治療を受けることが大切です。

(長崎市茂里町)日赤長崎原爆病院循環器内科 冠動脈疾患治療部長  松本 雄二

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