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2019年2月18日 掲載

「鼻呼吸障害」

 皆さん、普段から「鼻で呼吸」していますか? 口呼吸になっていませんか? 鼻には、さまざまな機能が備わっています。

(1)ごみ、細菌、ウイルス、花粉などの体内への侵入を防ぐ

(2)空気の湿度や温度を調整する

(3)においを感じ取る
  −などが代表的な機能です。 鼻詰まりに伴い、これらの重要な機能が損なわれるとさまざまな問題を引き起こします。年代別によくある相談を挙げてみたいと思います。

 乳児では一般的に1歳前後くらいまで口呼吸がうまくできません。このため鼻が詰まると、息ができずおっぱいが飲めなくなってしまいます。少し鼻水が増えただけで、夜間頻繁に目を覚まし、咳(せき)や痰(たん)で眠れなくなってしまいます。

 乳幼児では、鼻の奥にあるリンパ組織「アデノイド」が大きい場合も、鼻が詰まる原因になります。耳につながる耳管を圧迫することで、反復する中耳炎も引き起こします。口で乾燥した冷たい空気を吸い込み、鼻汁がのどに流れ込むことで、咳が止まらなくなる場合があります。

 小中高生対象の学校健診では、アレルギー性鼻炎が疑われる児童生徒が多数認められます。鼻詰まりが長引くことで副鼻腔(びくう)炎を併発している生徒もいます。頭痛(頭がぼーっとする)、夜間に熟睡できないなどの症状につながり、勉強に集中できなくなってしまいます。

 成人では鼻炎症状が悪化して、嗅覚や味覚障害を伴う患者さんもおられます。耳鼻咽喉科でよく診察する扁桃(へんとう)腺炎やかぜ症状でも、鼻詰まりによる「のどの乾燥」が引き金となっている場合がありますが、意外と本人が自覚されていません。

 鼻詰まりだけが原因ではありませんが、睡眠時無呼吸症候群では深刻な症状を伴います。いびきにとどまらず、重症の場合には睡眠中の長時間に及ぶ呼吸停止、日中の眠気、高血圧や心筋梗塞、狭心症などを引き起こします。治療目的に呼吸療法を導入されていても、鼻詰まりのために機械をうまく装着できず治療を断念される場合もあります。

 高齢者では鼻詰まり以外に、後鼻漏(こうびろう)(鼻汁がのどに落ちる状態)や口臭を気にされて受診される場合も多いです。鼻炎の症状であったり、加齢に伴う変化であったり原因はさまざまです。

 鼻呼吸がうまくできない場合には、市販の薬で済ませずに、鼻の中を詳細に観察できる耳鼻咽喉科へ相談しましょう。通常の診察で判断がつかない場合には、必要に応じて内視鏡での観察、画像検査、鼻汁検査や採血を行います。お困りの症状に応じて原因を特定し、最善の治療方法を提案できるものと考えます。長年苦しまれた不快症状を解決するためのお手伝いができるかもしれません。

 最後に3月3日は「耳の日」です。日本耳鼻咽喉科学会の提案により、長崎でも3月2日午後2時から、長崎市栄町の市医師会館7階講堂で「耳の日」公開講座・相談会を開催します。参加は無料です。問い合わせは長崎大学耳鼻咽喉科(電話095−819−7349)。

(西彼長与町)てつ耳鼻咽喉科 院長  岩永 哲

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