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2019年6月3日 掲載

「前立腺疾患」

 2016年の統計では、罹患(りかん)数(男性)が胃がんに次いで2位でした。皆さんは前立腺が一体どこにあって、何をしている臓器か、ごぞんじでしょうか。きょうは、前立腺と前立腺疾患について紹介します。

 前立腺は「ぼうこう」という、尿をためる袋状の臓器の下方に位置しています 先日、男性芸能人が前立腺がんを公表し、関心を集めました。前立腺がんは増加傾向にあり、ぼうこうからつながる「尿道」を取り囲む、栗の実のような形の臓器で、精液の一部を作っています。

 前立腺がんの早期では、症状が出ることはほとんどありません。がんが前立腺の辺縁にできやすいことが一因です。進行すると尿道に影響を及ぼし▽尿が出しにくい▽血尿が出る▽排尿時の痛み−といった症状が出現します。さらに進行すると、他の臓器へ転移を来します。前立腺がんは骨へ転移しやすいため、骨の痛みから診断に至ることもあります。

 前立腺がんの罹患数が増えている理由の一つに、腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)検査の普及があります。人間ドックや自治体の検診で受けられます(採血が必要)。一部自治体では無料でできますので、ホームページなどで調べてみてください。50代以上、特に家族に前立腺がんがある人は、積極的に検査をしてください。ぜひ、特定健診と同時に受けてほしいです。

 前立腺がんのほかに、よく知られる疾患として前立腺肥大症があります。肥大する場所はがんの患部とは異なり、尿道の周囲です。肥大症が進行してがんになることはありません。尿道の周りが肥大するため尿道が圧迫され▽尿の出しづらさ▽尿の勢いがない▽排尿に時間がかかる−などの症状が出現します。

 これがじわじわ悪化すると、気付かないうちに、ぼうこうが尿でいっぱいになることもあります。こうなると、ためきれなくなった尿が勝手に漏れ出る、尿が全く出せなくなる、といった状態に陥ります。行き場のない尿が腎臓にまでたまり、腎臓の機能を落とすこともあります。

 ぼうこうを圧迫する形で大きくなると▽尿が残った感じ▽何回もトイレに行く▽突如出現する強烈な尿意−などの症状が出ます。これらの症状は、前立腺の大小にかかわらず出てきます。つまり、大きくても症状がない人もいれば、小さくても症状がある人もいるのです。

 人間ドックでの画像検査で前立腺が大きい事が判明し、自覚症状なく受診される人がいます。自覚症状がなくても残尿を認めることがありますので、受診して、気付かない病状の進行がないかを確認しておくのは、大事なことです。

 また、飲酒や風邪薬の内服で突然、尿が出せなくなることがあります。これは「尿閉」といって、とてもつらい状態です。前立腺が急激にむくんでしまうことで起きます。風邪薬の注意書きには「前立腺肥大症の方は注意ください」との記載があるはずです。排尿状態に不安がある人は、深酒や風邪薬の内服は避けてください。

(長崎市横尾町)みきクリニック 院長  杠葉 美樹

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