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2019年8月19日 掲載

「副鼻腔炎」

感染が原因、慢性化も

 私たちの左右の鼻の穴の奥には、空気の通り道となる鼻腔(びくう)があります。周囲には副鼻腔といういくつかの空洞があって、鼻腔とつながっています。

 副鼻腔は、上顎洞(じょうがくどう)(頬の奥)、篩骨洞(しこつどう)(眼の内側)、前頭洞(ぜんとうどう)(目の上)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)(篩骨洞の奥)−に分かれています。副鼻腔の粘膜には線毛が生えていて、分泌物がたまっても、線毛が動いて鼻腔の方へ排出されるようになっています。副鼻腔と鼻腔がつながっている場所は「自然口」と呼ばれています。

 この自然口が、炎症で腫れるなどしてふさがると、分泌物が排せつされなくなり、副鼻腔炎になってしまいます。

 副鼻腔炎は、症状の出ている期間によって急性と慢性に分けられます。急性副鼻腔炎の原因は、風邪などのウイルス感染や細菌感染がほとんどです。しかし、ハウスダストや花粉症などのアレルギー性鼻炎を合併することも、しばしばみられます。  鼻詰まり、鼻水、鼻水 がのどに流れてくる(後鼻漏(こうびろう))、咳(せき)が出る、頭痛、顔面痛、においがしない− などの症状が現れます。一般的に1か月くらいで、症状は軽快していきます。

 慢性副鼻腔炎は症状が3か月以上続くものです。急性副鼻腔炎が長引いたり、繰り返したりして慢性化します。炎症が長引くと、鼻腔や副鼻腔の一部の粘膜が腫れあがり、「鼻茸(はなたけ)」と呼ばれる突出した腫瘤(しゅりゅう)が鼻腔にできます。鼻茸が大きくなると、鼻詰まりがひどくなります。また、急性副鼻腔炎と同様に後鼻漏、後鼻漏による咳、においがしない、といった症状に悩まされたりします。

 副鼻腔炎は、鼻腔内の診察やファイバースコープで、副鼻腔方向から出てくる自然口付近の膿(うみ)の出方、粘膜の腫れ具合、後鼻漏の状態、鼻茸の有無などを観察して診断します。エックス線(レントゲン)撮影、コンピューター断層撮影(CT)も診断に有効な検査です。

 治療は抗菌薬、去痰(きょたん)剤などの内服治療、鼻腔の処置、鼻洗浄、ネブライザー治療があります。自然口付近の粘膜の腫れを取り、副鼻腔に炎症でたまった分泌物の排せつを促し、鼻腔に出てきた鼻水を吸引します。鼻水が少なくなり鼻腔が広がって、副鼻腔に薬が届きやすいようにした上で、炎症を抑える霧状の薬の吸入(ネブライザー治療)を行います。鼻洗浄や鼻水の吸引などの鼻腔処置では、鼻腔や副鼻腔にたまった鼻水に含まれる細菌を減らすことができます。

 内服治療などの保存的治療で治りが悪い場合は、手術療法があります。最近は内視鏡を中心とした手術が主流となり、術後の痛みなども軽減され、患者さんの負担もずいぶんと軽くなりました。手術は一般的には、鼻腔側から鼻茸を切除したり、自然口を広げて鼻腔と副鼻腔の交通をつけたりすることで、換気と排せつを良くする手術です。

 風邪の後に鼻詰まりや、鼻水がのどに流れてくる、顔面痛などの症状が続く場合、まずは耳鼻咽喉科にご相談ください。

(長崎市矢上町)かせ耳鼻咽喉科 院長  加瀬 敬一

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