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2019年9月16日 掲載

「ロコモティブシンドローム」

運動器障害で足腰に衰え

 あなたは高さ40センチの椅子から片足で立ち上がれますか? 立てなければ、もしかするとロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下ロコモ)かもしれません。骨、関節、筋肉など体を動かす「運動器」の障害や機能不全が原因で足腰の動きが衰え、移動能力が低下した状態をいいます。

 「メタボリックシンドローム(メタボ)」という言葉が流行語大賞に選ばれた2年後の2007年に、日本整形外科学会が、同じくらい皆になじんでほしいという願いを込めて名付けました。日本では4700万人がロコモと推計され、原因疾患には骨粗しょう症による骨折、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症などがあります。

 日本はいよいよ人生100年時代に突入します。厚生労働省は07年に日本で生まれた子供の半数が、107歳より長く生きると推計しています。1947年の平均寿命は男性50歳、女性53歳だったことを考えると、この70年間に時代は大きく変わったと実感します。しかし、たとえ平均寿命が延びても、要介護や寝たきりになれば幸せな老後とはいえません。

 厚労省の調査によれば、要介護になった原因のうち、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患− を合わせた運動器障害の割合は全体の36%を占め、最多となっています。

 さらに深刻なのは「介護を受ける期間」の問題です。日本人の平均的な介護期間は男性9年、女性12年と、男女とも10年前後にわたり、寝たきりで介護を受ける生活を送っているのが現状です。今の日本は、長寿であっても人生の最後まで健康に過ごせるとは限らないことが分かります。

 これらのデータは、いかにロコモの予防が大切かを示しています。それでは、予防にはどんな運動が良いのでしょうか? 同学会は、足の筋肉を付けるスクワットと、バランス能力を養う片足立ちを「ロコトレ」として推奨しています。

 スクワットは、息を止めず深呼吸するペースで5、6回。膝は90度以上曲げないようにして、1日3回行います。片足立ちは、目を開けたまま姿勢を真っすぐにして左右1分間ずつ、これも1日3回です。急に長距離のウオーキングから始める人もいますが、健康にはとても良いものの、太ももやお尻の筋肉は付きません。また、急な運動は関節を痛める原因にもなります。1日10分でできるロコトレから、始めてはいかがでしょうか?

 同学会などの「ロコモチャレンジ!推進協議会」が展開する「Try!40cm」プロジェクトは、ロコモ度テストの一つである「40センチの高さから片脚で立ち上がれるか」のテストに、多くの人に挑戦してもらうことを目的とした活動です。同協議会が楽しい動画をたくさん公開しています。実際に試してみると意外に難しいので、家族や職場の皆さんで、ぜひトライしてほしいと思います。

 ロコモティブには「運動の」以外にも「機関車」という意味があります。皆さんも機関車のように力強く、介護無用の人生を楽しく走っていきましょう!

(西彼長与町)道ノ尾みやた整形外科  宮田 倫明

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