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2019年10月21日 掲載

「紫外線と乾燥」

皮膚病やかゆみの原因

 「ふと、皮膚の異常に気付きました」。皮膚科を受診される方の多くは、このようにおっしゃいます。相談を受けた症状が皮膚がんのこともあります。皮膚は生涯にわたり、環境中の脅威から体を守ってくれる臓器です。日頃から皮膚を観察し、手入れする機会を持たれるようお勧めします。本稿では特に、紫外線と乾燥について説明します。

 皮膚に影響を及ぼす環境要因の一つが日光に含まれる紫外線です。皮膚に適度な日光を浴びることは、骨形成に重要なビタミンの合成や、体内時計の調節、皮膚の健康維持に役立ちます。皮膚病治療のため、特定の波長を持つ紫外線を照射する治療もあります。

 一方で、強い日光に長時間さらされると皮膚に障害が生じることがあります。例えば、一般的なプラスチックが炎天下に長時間放置されると、紫外線の影響により性能が劣化し容易に割れてしまいます。皮膚がこれと同じ環境にあったら、どうなるでしょうか。日焼けによるダメージは皮膚に炎症を生じさせ、しみ、くすみ、良性腫瘍、がんの原因となります。

 これらの症状は日光にさらされやすい顔に見られることが多いため、鏡を見たときに気付くことができるでしょう。 以前にはなかった皮膚の異常が持続している場合は、皮膚科医にご相談ください。

 皮膚の乾燥もさまざまな疾患を生じる原因となります。皮膚が乾燥すると、温度や衣類の摩擦などによってかゆみを生じやすく、かくことで新たな皮膚炎になります。生活や仕事とも密接な関係があり、家事や職場で頻繁に洗浄剤(食器洗剤やシャンプーなど)を使用すると皮脂は持続的に損なわれ、皮膚炎の原因となります。こうして生じる代表的な皮膚病の一つが手荒れです。

 皮膚炎の発症を予防するには日頃から、皮膚の水分や皮脂を損なわないようにする工夫が必要です。乾燥した皮膚に保湿剤を塗ることは正常な機能の維持に有用です。乾燥に気づいたらその都度塗るのが効果的です。

 また、体など着衣部分の皮膚が乾燥してかゆい方は、保湿剤を脱衣所に置いておくと大変便利です。入浴した後に服を着てしまうと塗ることを忘れる上、たとえ思い出しても塗ることがおっくうに感じてしまいがちです。入浴して体をふいた直後、衣類を着る前に保湿剤を塗ると効果が高まりますし、塗ることを忘れないでしょう。加えて、手荒れのある方はせっけんや洗浄剤を使う前に保湿剤を塗っておくことで、症状の悪化を予防する効果が期待できます。

 11月12日は、日本臨床皮膚科医会が制定している「いい皮膚の日」です。自身の皮膚に目を向けるきっかけにしていただければ幸いです。11月2日土曜日、長崎市で皮膚の日を記念して市民公開講座を開催します。ぜひお気軽にお越しください。

 ◆市民公開講座「日常で遭遇する皮膚のトラブルとスキンケアのコツ」
2019年11月2日(※終了しています)午後3時〜4時、長崎市栄町の市医師会館。講師は室田浩之。入場無料。

(長崎市坂本1丁目)
長崎大大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野 教授  室田 浩之

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