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2019年12月2日 掲載

「子どものスマホ依存」

発達阻害、脳機能低下も

 「家に帰ってからは、夕食のとき以外は基本的に寝るまでずっとやってます」

 スマートフォンを使ったゲームを毎日6時間以上やっていて、ゲーム以外の無気力を訴える男子中学生の言葉です。
彼は友達と時間を決めて、一緒にスマホでオンラインゲームをやっています。家での時間はゲームをやっているので、親との会話はほとんど無し。学校も休みがちな彼の表情に感情や活気は少なく、青白く不健康に見えます。

 この子は特別ではなく、最近、スマホ依存の子どもが増えています。2017年度の厚生労働省調査では、中高生のインターネット過剰、病的な使用の推計数は93万人に上りました。

 スマホやゲームの依存に関する問題は、成人から子どもまで幅広い年代層で問題視され始めています。子どもに接するよりもスマホに熱中する母親や、家族とコミュニケーションを取らず自室でネットに没頭する父親、友達をつくらず社会から引きこもりゲームに没頭する大学生などです。中でも大きな問題が、ゲームやネットの依存も含めた子どものスマホ依存です。

 子どもは、現実のコミュニケーションを通してさまざまな能力を発達させていきます。豊かな情緒や道徳性、共感性、社会性、協調性、仲間意識、自尊感情や自己効力感など、子どもにとって必要な能力の発達に、他者との交流は重要な役割を果たします。スマホ依存はこれを阻害します。

 また、ゲーム依存によって脳の前頭前野の機能低下が引き起こされることも分かっています。長時間スマホゲームをやることで、脳がダメージを受け、思考力や注意力、判断力に影響を与え、衝動の制御も困難になります。ゲーム刺激に強い欲求が生じ、満足感を得ることが困難になります。

 これらの脳の変化は、ギャンブル依存やアルコール依存でも同様に認められており、スマホ依存はそれらの依存と変わらないともいえます。さらにスマホ漬けが続けば、脳疲労が回復することなく、うつ症状も表れます。

 ギャンブル依存症やアルコール依存症は完治が難しく、たとえ依存症から抜け出したとしても、心身に大きな影響を与えます。長崎ではカジノ誘致が話題になっていますが、スマホを持っている子どもは、カジノをポケットに入れ持ち歩いているのと同じで、とても危険なものを持ち歩いていることになるのです。

 昔のゲームは、ソフトを買って使いボスキャラを倒したら終わりでした。しかし、今のスマホゲームは無料で始められます。アップデートを繰り返し飽きさせず、魅力的で終わりがありません。依存性が高く危ないものです。

 今の時代、スマホは頭ごなしに禁止できません。だからこそ、大人は子どもが依存を引き起こす危険なものを持っていることを認しましょう。学校や家庭でスマホをどのように使っていくかに関する、十分な話し合いやルール作りが重要になります。スマホに支配されるのではなく、スマホを活用するよう子どもを導くことが、大切な大人の役割なのです。

(長崎市新地町)山の手クリニック 臨床心理士  倉成  央

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