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2020年2月3日 掲載

「眼底検査」

無症状でも不安なら受診を

 「目は口ほどに物を言う」といいます。目つきから相手の感情が分かってしまう、という意味のことわざです。
 では、目の中の様子からは何が分かるでしょうか。眼底検査は目の内側をのぞく検査です。眼科医が、レンズを使って目の中に光を当てながら奥底を観察します。視力の良い人なら、まぶしい検査ですが、痛くはありません。

 より詳しく隅々まで観察するときは、目薬で瞳孔を大きく広げてから検査します。目の奥には、視神経の入り口である視神経乳頭や、網膜という神経でできた膜、動脈や静脈が観察されます。

 視神経乳頭を観察すると、緑内障や、頭の中の疾患が隠れているのを発見できることがあります。視神経自体が炎症を起こして腫れていたり、以前の炎症で弱ってしまっていたりすることもあります。視神経乳頭には元々、おわんのような陥凹(かんおう)がありますが、健診結果で「視神経乳頭陥凹拡大」と記載されたときは、「緑内障が疑わしいの で詳しい検査を受けるように」という意味です。

 網膜は、光を感じる細胞でできた膜です。網膜の中を走る大きな動脈や静脈の様子は、高血圧や動脈硬化の程度を判 定するのに役立ちます。

 網膜に出血があれば、高血圧や糖尿病、血管閉塞(へいそく)、血液疾患などが体の中に隠れている可能性があります。それぞれの全身疾患によって網膜の出血の形状に特徴があります。また、網膜の中でも特に感度の高い、黄斑と呼ばれる所に老廃物がたまってくると、加齢黄斑変性症に進行することがあります。

 目の前に、虫や髪の毛のようなものが動いて見える「飛蚊(ひぶん)症」という症状が現れたときも、眼底検査を受けるようお勧めしています。多くは年齢による眼内の生理的な変化が原因ですが、時に網膜に穴が開いていたり、網膜剥離が生じていたりすることがあります。

 目の中は非常に狭いですが、見るための大切な役割をする、いろいろな部品が詰まっています。目の病気にもたくさんの種類があり、治るもの、一生付き合っていかなければならないものがあります。治療や観察がずっと必要な病気の代表は、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症です。

 特に緑内障や糖尿病網膜症の初期は、自覚的には無症状で、症状が出たときにはかなり重症になっていることがあります。何も症状がなくても、不安があればなおさら、眼底検査を受けてみてください。異常がないと診断されたら安心できますし、早期の疾患が発見されれば、進行を予防することができるかもしれません。

 眼底検査を受けるときの注意点としては、瞳孔を広げる目薬を使用すると、数時間まぶしくなったり、ピントが合わせにくくなったりすることがあります。できれば、ご自身で車などを運転しないで眼科を受診するよう、お勧めします。

(長崎市中川1丁目)いなもと眼科 院長  稲本 美和子

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