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2020年3月2日 掲載

「じんましん」

突然出現し強いかゆみ

 皆さん、一度は耳にしたことがある病名ではないでしょうか。4、5人に1人が一生に1回経験するといわれている身近な皮膚病です。では、どのような病気なのでしょうか?

 突然、皮膚に赤みや、蚊に刺されたときのような隆起(膨疹(ぼうしん))が出現する、とてもかゆみの強い病気です。一つ一つの赤みや膨疹は24時間以内に消えるというのが特徴です。

 ただし、一つの赤みが消えても、すぐ近くに新たな赤みが出現することもあるため、ずっと出ているように感じることがあるかもしれません。また、夕方から夜間にかけて症状が出現、悪化することが多いため、受診したときには皮膚の症状が消えているということも、しばしばあります。

 なぜじんましんが出るのでしょうか? 残念ながら7〜8割は「特発性」といい、原因がはっきりしないものです。
受診する方は、何らかのアレルギーが原因ではないかと心配している人が多いのですが、実際にはアレルギーが原因ケースは全体の5%程度です。このため、じんましんの患者全員にアレルギー検査をする必要はありません。

 ほかに特殊なタイプとして、物に当たったり圧迫したりしたところに症状が出る「物理性」、若年者に多く発汗や体温上昇に関係する「コリン性」、温度変化の刺激による「温熱」や「寒冷」−といったじんましんがあります。

 原因が分からないのに治療ができるのでしょうか? じんましんが生じるときは、何らかの誘因や刺激で、皮膚にいる肥満細胞という免疫担当細胞からヒスタミンという伝達物質が放出されます。ヒスタミンが血管に作用して皮膚に赤みや膨疹を、神経に作用して、かゆみを起こしていることは解明されており、ヒスタミンの放出を抑える治療を行います。

 治療の主役は抗ヒスタミン薬です。抗アレルギー薬とも呼ばれるため、じんましんの原因がアレルギー性だけだと誤解されるのかもしれません。多くの種類があり、それぞれ構造が異なります。人により薬に対する反応が違うため、効果が乏しい場合は別の抗ヒスタミン薬に変更したり、増量、併用することが勧められています。抗ヒスタミン薬の中で強い、弱いの区別はなく、また眠気と効果は関係ありません。

 治療において大事なポイントは、症状が出現しなくても、しばらく薬の内服を継続することです。症状が出現したときにだけ薬を飲んでいると出現を抑制することができません。

 6週間以上じんましんが持続した場合、慢性と診断します。慢性といっても、一生じんましんが続く人はほとんどおらず、多くの場合2〜6年で治癒するといわれています。内服治療を行っても出現をコントロールできない場合は、「オマリズマブ」という薬を4週間おきに皮下注射する方法も登場し、選択肢が広がっています。この注射は主に病院皮膚科で行うため、使用の希望がある方はまず、かかりつけ医にご相談ください。

(佐世保市相浦町)とみむら皮ふ科 院長  富村 沙織

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