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2020年4月6日 掲載

「ピロリ菌と胃がん」

除菌後も定期検査を

 最新の統計で、がんは日本人の死亡原因で最も多くなっています。部位別で胃がんは肺がん、大腸がんに次いで3番目に多い死因となっています。胃がんは、誰もがなる可能性がある病気といっても過言ではありません。

 ピロリ菌感染は、胃がん発症にとって最も重要な危険因子とされています。そのため、ピロリ菌の感染が証明された場合は、除菌治療が勧められています。治療の成功率は90%以上であり、これまで多くの患者さんが除菌治療の恩恵を受けています。

 ただ、診療していると「除菌したら胃がんにならない」と勘違いしている人がいます。胃がんの発生率は除菌前の約3分の2に減ることが知られていますが、胃がんにならない、というわけではありません。除菌後も、定期的な内視鏡検査を受けることが推奨されています。

 胃炎が進行した人ほど、胃がんになりやすいことが知られています。胃炎が進行する前に除菌を実施した方が、より効果を期待できるため、ある程度年齢が若いうちに早く除菌することが大切です。胃炎の進行具合は、内視鏡検査で調べることができます。

 また、現在実施されているABC検診(胃がんリスク分類)では、血液検査で将来の胃がん発生の危険度が判別できます。受診者は検査結果により、発生可能性が低い順にA−Dの4群に分けられます。D群と判定された人は、胃炎が相当進んでピロリ菌がすめなくなった状態であり、除菌は不要ですが、胃がんになる確率が約80人に1人と、高いとされています。内視鏡検査の間隔を短めに設定するなど、特に注意が必要です。

 除菌を行う際には、内視鏡検査を実施することが必要とされています。胃がんがないことを確認する以外に、胃炎の進行具合、除菌後の将来の胃がんリスクを評価するために大切です。医師に除菌後の胃がんリスクを確認し、以降の内視鏡検査の継続について相談してください。

 胃がんは早期発見すれば、内視鏡治療で根治が期待できる疾患です。除菌後も定期的に内視鏡検査を実施することで、早期発見が可能となります。実際、進行した胃炎をもつ除菌患者では、定期的な内視鏡検査で複数個の早期胃がんを同時に、あるいは別の時期に発見し、その都度、内視鏡治療で根治に至ることも珍しくありません。

 ピロリ菌が胃がん最大の危険因子であることは間違いありませんが、ピロリ菌未感染者でも、胃がん、食道胃接合部がん、バレット食道がんが、頻度は低いものの発生することがあります。現時点で、これらに対する早期発見は内視鏡検査が有用です。しかし、全ての人に定期的に実施することは不可能であり、今後ゲノム医療などの先進技術に期待したいところです。

 ピロリ菌感染および除菌の有無、胃炎の進行具合を評価し、その人に応じた適切な内視鏡検査を行うことが重要です。詳しいことは、お近くの医療機関にご相談ください。

(大村市皆同町)ながさき・おおば内科・消化器内科クリニック 院長  大場 一生

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