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2020年5月18日 掲載

「持続性知覚性姿勢誘発めまい」

動きや視覚刺激で症状

 原因がはっきりしない、長引く慢性的なめまいで、お困りの方もおられることと思います。慢性めまいの原因として持続性知覚性姿勢誘発めまい」(PPPD)という新たな概念が、2017年に定義されました。

 PPPDは、浮遊感(ふわふわした感じ)、不安定感、非回転性めまい−のうち一つ以上が、3カ月以上にわたってほとんど毎日存在します。症状は長時間(時間単位)持続し、悪化や軽減があるものの、1日のうちでは時間がたつにつれて悪化します。

 また、立位姿勢や体の動き、視覚刺激で症状が悪化するといった特徴があります。立位姿勢とは起立や歩行のことで、特定の方向や頭の動きに関係なく、症状を感じやすいとされています。

 体の動きについては、乗り物に乗ったり、他人によって動かされたりすることで、めまいが悪化する傾向があります。例えば、エレベーターや馬などの動物に乗る、人ごみに押されるといったことです。診察していますと、子どもの頃に車酔いしやすく、ブランコや回転する遊具に乗ると、具合が悪くなっていたという患者さんも多いようです。

 視覚刺激では、人ごみで行き交う人や往来する車など、動いているものを見たとき、陳列棚を見たとき、コンピューターや携帯用電子機器の複雑な視覚パターンを見たとき−などに、症状が悪化しやすい傾向があります。

 この疾患は、その他のめまいを起こす耳の病気、神経疾患、内科的疾患、心理的ストレスによるめまい・平衡障害が、先行して発症することが多いとされています。耳疾患では、脳と耳をつなぐ「前庭(ぜんてい)神経」の炎症(前庭神経炎)の後に、発症することが多い印象を受けます。うつや不安症を抱えている患者さんも多いとされます。

 これらの特徴的な病歴があり、他にめまいの原因が存在しない、あるいは、その他のめまいを起こす病気が先行していても、それだけでは原因を説明できない場合に、PPPDと診断されます。

 診断には病歴の詳細な聴取に加え平衡検査、聴力検査、採血、血圧測定を行います。場合によっては心理検査、耳や脳のコンピューター断層撮影(CT)や、磁気共鳴画像装置(MRI)検査などの画像検査が必要になります。

 一般に、既存の抗めまい薬は無効なことが多く、治療は、患者さんに診断や病気について、正しく理解していただくことから始まります。耳疾患が背景にある患者さんには、前庭リハビリテーションや有酸素運動を勧めています。耳疾患がない場合でも運動は推奨しています。

 睡眠障害や精神的なストレスを抱えておられる方も多く、薬剤を使用しなくても症状は軽減することもあります。ご自身の工夫で解決できない場合は、補助的に睡眠導入剤や抗不安薬などを使用します。

 「日本めまい平衡医学会」は、お近くの「めまい相談医」をホームページに掲載しています。PPPDかもしれないと思われたら相談医をお訪ねください。

(長崎市茂里町)日赤長崎原爆病院 副院長 耳鼻咽喉科部長  隈上 秀高

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