>>健康コラムに戻る

2020年6月1日 掲載

「尿管結石」

食の欧米化などで増加

 深夜や早朝に突然起こった激痛で、病院に運ばれた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。腎臓から膀胱(ぼうこう)までをつなぐ尿管に結石が生じる疾患を尿管結石といいます。尿管結石の生涯罹患(りかん)率は男性15・1%(7人に1人)、女性6・8%(15人に1人)と、10年前と比べ1・6倍に増加しています。

 増加の原因は (1)食生活の欧米化(高脂肪、高動物性タンパク)や水分、カルシウムの摂取不足、夕食から就寝までの時間が短いなどの生活様式の変化 (2)診断技術の向上 (3)人口の高齢化−などです。加えてメタボリック症候群と関連があり、肥満の人に多い傾向が認められています。

 カルシウムを含んだ結石が約8割を占めますが、尿路が細菌感染したときにできる「ストロバイト」を含んだ結石(感染結石)も増えてきています。

 症状は、腰背部から側腹部にかけての激痛(結石で尿管が閉塞(へいそく)して腎臓の内圧が急上昇するため)、下腹部への放散痛(患部と離れた場所の痛み)、肉眼で分かる血尿などが一般的です。健診で尿潜血を指摘され2次検査で見つかったり、高熱の原因として結石性腎盂(じんう)腎炎が見つかったりする患者も増えています。

 検査は (1)検尿・尿沈渣(ちんさ)(詳しい分析) (2)腎、尿管、膀胱を含んだエックス線撮影(腎尿管膀胱部単純撮影=KUB) (3)腎、尿管の流れが悪くないか判断する腹部超音波検査 (4)腹部コンピューター断層撮影(CT)−などを行います。

 治療はまず、痛みに対して痛み止めの座薬や注射を使います。重症の高熱(結石性腎盂腎炎)があれば、緊急で尿管カテーテルを挿入し改善を図ります。その後は結石の部位や大きさ、患者の背景(年齢、体形、職業、合併症の有無など)にもよります。結石の大きさが長径1センチ未満なら自然排石を待ちます。

 小さくても痛みが続く場合や長径1センチ以上の結石は、外科的治療(結石破砕術)を考えます。「体外衝撃波結石破砕術(ESWL)」と「経尿道的尿路砕石術(TUL)」が主流です。

 ESWLは、体外から衝撃波エネルギーを当てて結石を砂状に粉砕する手術です。麻酔が不要で、1泊2日の入院と負担は少ないですが、2センチ以上の大きい結石や、硬い結石には効果がありません。

 TULは、麻酔下で内視鏡により結石を直接見ながら破砕し、体外に摘出するため、根治性の高い手術です。当院でも、今年からレーザーを用いたTULを導入し、5日間程度の入院で済みます。2018年の全国集計ではESWLが約2万件、TULが約4万件と、TULの方が増えてきています。

 再発率は5年で約45%と高く、再発予防の基本は (1)1日尿量2リットル以上を目標に水分を摂取 (2)肥満を防止 (3)カルシウムを多めに摂取し、夕食後すぐに寝ないような食生活の改善−を勧めています。症状がある場合はもちろん、症状がない尿管結石を認めた場合にも、適切な経過観察、治療法を相談するため、泌尿器科の受診をお勧めします。

(長崎市葉山1丁目)光晴会病院泌尿器科 部長  山崎 安人

>> 健康コラムに戻る