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2020年7月20日 掲載

「がん患者の緩和ケア」

地域で生活、治療支援

 この数十年の医療技術の目覚ましい発展により、多くの病気の治療が進歩しています。特にがんに関しては、がん検診の推進や検査・治療技術の進歩により、早期発見・早期治療を行えるようになりました。がんを治癒できる患者さんや、早期発見ができなかった場合でも、病気をコントロールしながら、以前より長く自宅で生活できる患者さんが増えています。

 国立がん研究センターの最新の資料を見てみると、日本でがんを発症する人の数は徐々に増加しており、ここ数年、年間100万人を超える方が何らかのがんを発症しています。一方で生存率は向上しており、日本における全がんの5年相対生存率(がんと診断されてから5年後の生存率)は66・1%と、前回発表の65・8%に比べ、若干ですが向上しています。

 がん治療の場も変化しています。以前であれば、がん治療中の患者さんは主に入院生活でした。しかし現在では、入院の必要があるのは、手術や放射線治療(外来で行えることもあります)、初めての抗がん剤治療(最近はいろんな種類の薬剤を使用するため、総称して薬物療法といいます)を行うときなどが、ほとんどです。多くの患者さんは、薬物療法を外来で行っています。

 現在、私は長崎大学病院で緩和ケアを担当し、主にがんによる痛みや治療の副作用を軽くするサポートを行っています。時には精神的なサポートをしたり、治療が終了となる際に、今後の療養生活についての相談に乗ったりすることもあります。

 緩和ケアといっても、がん治療の終了した患者さんばかりでなく、治療中の患者さんも多く受診されます。その中で頻繁に感じるのは、治療が長くなっているからこそのサポートの必要性です。とりわけ、自宅での生活を支えるためのサポートです。

 2〜3週間おきの薬物療法で受診される際、併せて緩和ケアを受診していただくことが多いです。その際には、痛みや副作用の確認を行います。ほかにも、生活の上で困っていることや気がかりなどを確認しながら、患者さんに合わせたサポートを行うよう心掛けています。

 長く治療を続けている患者さんの多くは、がんによる体の痛みだけではなく、薬物療法の副作用による手足のしびれや体のだるさ、食欲不振などさまざまな症状を有することが多く、より頻繁なサポートが必要な患者さんも多くなっています。

 遠方から受診する患者さんも多いため、地域の開業医の方々と連携して、一緒に体調管理を行っていただくことが増えています。地域の先生にかかりつけ医となってもらうことで、治療中に起こる体調不良にも早期に対応できます。

 がん治療を順調に行っていくには、日々の体調管理が非常に大事です。がん治療を長く、少しでも快適に継続するためにも、かかりつけ医を見つけませんか。探し方が分からない方は、がん治療を行っている病院のスタッフに問い合わせてみてください。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院緩和ケアセンター 副センター長  石井 浩二

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