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2020年8月16日 掲載

「不整脈」

急激な息苦しさは注意

 人間の体では、心臓が規則的に収縮と拡張を繰り返して1分間に約5リットルの血液を全身に送り出し、循環させています。この動きが血管の拍動を作り出し、脈拍となります。

 血管の拍動は、手首内側の親指側にある橈骨(とうこつ)動脈を触ることで感じることができ、このようにして脈拍を調べる行為を「検脈」と呼びます。1分間の拍動回数が脈拍数であり、正常であれば60〜90回の規則的な脈拍を数えることができます。不整脈とは、この正常な脈拍以外の全ての脈拍の乱れのことです。

 不整脈には、脈拍が異常に速くなるものや遅くなるものがあります。脈拍数が1分間当たり100回以上になれば頻脈性不整脈、50回未満になれば徐脈性不整脈と分類します。「徐脈」とは、脈が遅くなることです。ほかに、検脈をしていると時々脈がとぶ所見として感じられる「期外収縮」という単発の不整脈があります。

 頻脈性不整脈には心房由来の「心房細動」「心房粗動」「発作性上室性頻拍」、心室由来の「心室頻拍」「心室細動」があります。頻脈に伴う動悸(どうき)症状のほかに、息切れ、血圧低下といった循環不全を示唆する症状を伴うこともあります。

 心房由来の頻脈発作では慌てる必要はありませんが、もし急激に悪化する息苦しさや冷や汗などの症状がある場合は、心室由来の頻脈発作の可能性があります。この場合は急ぎ医療機関を受診されてください。

 徐脈性不整脈には、右心房内にある脈拍をつかさどる組織「洞結節」の疾病である洞不全症候群や、心房から心室へ電気刺激を伝える組織「房室結節」の疾病である房室ブロックがあります。いずれも心拍動の一時的な停止や、高度な徐脈を生じます。

 心拍動の停止が3秒を超えると脳虚血症状、つまり失神発作が出現するようになり、ペースメーカー治療が必要です。また、徐脈により心不全症状を伴う場合もペースメーカー治療の適応です。

 これらの不整脈を診断できるのは心電図検査です。発作を生じているときに記録されるのが一番良いのですが、なかなか発作中に心電図が記録できない場合もあります。そのときは、24時間あるいは、それ以上の期間の心電図を記録できる「ホルター心電図検査」を行います。

 治療は、まずは薬物療法から始めるのが一般的です。非薬物療法の一つに「カテーテルアブレーション治療」があります。心臓の中で不整脈の起源や発作を維持させる回路に対し、高周波電流を用いて心筋を焼き、不整脈を出現させなくする治療です。

 心室細動以外の頻脈性不整脈に適応があり、発作性上室性頻拍や心房粗動では、治療の第1選択となります。心房細動についても、最近ガイドラインが変更となり、第1選択として選べるようになりました。

 不整脈には、脈拍が速くなる不整脈や遅い不整脈など、いろいろな種類があります。症状を伴う脈拍の乱れを自覚すると不安になるかと思いますが、治療法も進化していますので、慌てずに医療機関に相談されてください。

(長崎市勝山町)おのクリニック 院長  小野 慎治

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