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2020年9月7日 掲載

「オスグッド病」

対応誤ると競技力低下

 「オスグッド病」は、皆さん一度は耳にしたことがある疾患ではないでしょうか。日常生活では困ることが少なく、成長期が過ぎると痛みがなくなるため成長痛として軽視されがちです。しかし誤った対応を取ってしまうと、スポーツ選手では競技力が低下したり、成長期終了後も痛みが持続したりすることがあり、実は注意すべき疾患です。

 主な症状は、膝のお皿の下の少し骨が突出した部位(脛骨(けいこつ)粗面)の痛みです。スポーツ活動を活発に行っている小児で、約7〜10%の発生率と報告されています。

 幼少期の脛骨粗面部は全体が軟骨の状態です。11歳頃から中央部を起点に骨が形成され始め、14歳頃に全て骨に置換されます。この軟骨が骨に変化する時期に組織の強度が低下すると考えられ、スポーツ活動でストレスがかかりすぎると、脛骨粗面に亀裂(裂離骨折)が生じます。これがオスグッド病の正体です。

 この疾患は進行性です。まず脛骨粗面部に炎症が生じ(初期)、その後、骨または軟骨に亀裂が発生します(進行期)。さらに亀裂が拡大し、上方へけん引され完全に分離してしまうと、脛骨粗面部は著しく変形してしまいます(終末期)。亀裂が拡大すればするほど治療期間もかかり、終末期に至れば完全な治癒は望めません。練習がハードになると痛みでパフォーマンスが低下し、場合によっては手術が必要となるケースもあります。

 当院を受診した患者さんの特徴ですが、発症しやすい学年は男児では小学6年から中学1年、女児では小学4年から5年にかけてが全体の7割です。競技種目としてはサッカー、野球、ソフトボール、バスケットボール、バレーボールの4種目が全体の8割を占めていました。

 初診時の進行度としては、痛みが出現して1週間以内に受診した人は、ほぼ全例が、わずかに亀裂が発生した初期の段階でした。しかし、痛みが出現してから受診まで3カ月以上経過していた場合、3割の患者さんは既に終末期となっており、残念ながら完全な治癒が望めない状態でした。

 受診後すぐにスポーツ活動を中止し、再発予防のリハビリを行った症例では全例が亀裂部の癒合を認め、問題なく競技に復帰しました。部活動を休めず競技を継続していた症例では4割が終末期へと進行し、長期間痛みが持続しました。

 短期間に後遺症なく治すためには、(1)痛みを感じたらすぐに整形外科を受診する(早期発見) (2)診断がついたら3〜4週程度は患部を安静にし、修復期間を確保する。特にジャンプやダッシュ、キックなどの動作は避ける(早期安静) (3)スポーツ活動を休止している間に柔軟性の改善や体幹強化を行い、痛みがないことを確認しながら徐々に運動量を上げていく(再発予防)−ことが必要です。

 順調に経過すれば6〜8週間でスポーツ復帰が可能です。オスグッド病だけでなく、スポーツ障害は予防がとても大切です。日頃からストレッチや体幹トレーニングを継続する習慣を持ちましょう。

(諫早市新道町)チカラ整形外科スポーツリウマチクリニック 院長  宮本 力

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