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2020年9月21日 掲載

「背骨の骨折(脊椎圧迫骨折)」

原因は骨粗しょう症

 「いつのまにか骨折」をご存じですか? 一般的な骨折は転落などで強い衝撃を受けたときに起こります。しかし高齢になると、物を持ったり、くしゃみをしたり、はっきりとしたきっかけも分からないのに文字通り「いつのまにか」骨折することがあります。

 起こることが最も多い場所は背骨です。骨折というと、腕などの長い骨がポキッと折れるのをイメージされると思いますが、背骨の場合は上下からつぶれるように折れるので、脊椎圧迫骨折と呼びます。

 主な原因は骨粗しょう症です。骨粗しょう症は骨の強度が低下し骨折しやすくなる状況のことをいい、加齢や閉経後の女性ホルモン低下が原因で起こる場合(原発性)と、別の病気や薬の影響で起こる場合(続発性)とがあります。

 たまたま別のことで撮ったエックス線検査で、過去の骨折が見つかることがあります。「いつのまにか」骨折していたのが、「いつのまにか」治っているのですが、ラッキーだったということにはなりません。骨折が起きたということは、他の骨も もろくなっているということだからです。

 そのような方は、続けて骨折を起こしやすいことが分かってきました。脊椎圧迫骨折を繰り返すと背中が丸くなり、その結果重心が前にきて、さらに転倒しやすくなります。転倒による脚の付け根(大腿(だいたい)骨近位部)の骨折や、繰り返す脊椎圧迫骨折は、寝たきりの大きな原因となっています。

 寝たきりになると生命予後(長く生きられるか)に悪影響が及ぶため、結果的に骨折によって寿命が短くなる可能性があるということです。

 (1)以前と比べて短期間で背が縮んだ(1年間で2センチ以上) (2)背中が曲がってきた (3)腰痛がある−といった症状はありませんか? そのようなときは整形外科を受診しましょう。整形外科ではエックス線で背骨の骨折の有無を確認し、また骨密度を計測します。別の病気で起こった骨粗しょう症が疑われる場合や骨代謝を調べる場合には、血液検査や尿検査を行うこともあります。

 背骨が1カ所でも骨折していると、それだけで骨粗しょう症と診断され、新たな骨折を起こさないために薬物治療が必要になります。現在ではさまざまな治療薬(飲み薬、注射)がありますが、いずれにしても薬は長期にわたって投与が必要となります。併せて食事療法(カルシウムやビタミンD=青魚など=、K=納豆など=の摂取)や日光浴、骨に適度な負荷をかけて骨を強くするための運動療法も必要です。

 さて、背中が曲がってくるのは骨折だけが原因ではありません。骨折以外の脊椎の変形や筋力低下も大きな原因になります。また、前かがみの姿勢でのデスクワーク、スマホ使用時の不良姿勢など、若い頃からの姿勢や習慣も猫背につながります。普段から正しい姿勢を保ち、背筋を伸ばすストレッチを心掛けましょう。

 10月8日は「骨と関節の日」です。筋肉、骨、関節など、運動器について気になることがあれば近くの整形外科へご相談ください。

(長崎市船大工町)楢林整形外科医院 院長  米倉 葉子

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