>>健康コラムに戻る

2020年12月21日 掲載

「お腹のエコーしてますか?」

臓器のがん早期発見

 エコーの検査をしたことがありますか?ゼリーを塗って検査をするあれです。ちょっとくすぐったいですが、痛くもないし放射線被ばくなどのリスクもない、でも、いろんなことが分かる検査です。クリニックなどに行くと、診察室などのベッドサイドに置いてあって、ちょっと気になる所を検査するのに使われます。

 私が消化器外科医として勤務をしていた際、専門は胆のうがんや膵臓(すいぞう)がんでした。これがなかなか手ご わく、予後の悪い病気の代表格でした。手術に抗がん剤や放射線療法を組み合わせる「集学的治療」を行うなどしても5年生存率は低く、難渋したものでした。

 がんは早期で見つけられれば根治性も高いのですが、多くのがんは、かなり進行するまでほとんど症状がありません。治療効果を得るためには、がん検診などを利用して見つけることが大切です。そのための検査の一つが腹部エコーです。

 腹部エコーで見る主な部位は、肝臓、胆のう、膵臓、脾臓(ひぞう)、腎臓、ぼうこう、子宮、前立腺などです。いずれも、がんをはじめとする腫瘍性病変がないかはもちろんですが、肝臓であれば傷んでいないか、脂肪肝がないかなどを見ます。最近は食生活の変化からか、脂肪肝が若年者で見られることが増えてきています。また、B型肝炎やC型肝炎のコントロールが良くなりつつある一方で、脂肪肝が肝細胞がんの発生母地(最初にがんが発生する場所)となってきています。

 胆のうでは、胆のう結石症、胆のうポリープの有無などを検査します。胆のう結石は20人に1人くらいにあるといわれます。検診のエコーで時々見かけ、胆のう炎や胆石発作などの腹痛の原因になります。胆のう炎がひどくなると、全身に細菌が回り重篤化する「敗血症」になる可能性もあります。

 このため、胆のう結石があって腹痛などの症状を伴っている場合は、手術をすることが多くなります。手術は腹腔(ふくくう)鏡手術といって、小さな創(きず)で身体への負担を少なくして済むことが多いです。また、最近では早期がんであれば、腹腔鏡手術で摘出することも増えてきています。

 膵臓は、お腹の中でも最も深いところにあって、なかなか診断が難しい臓器の一つです。膵臓がんを早期に発見するには、腹部エコーで丹念にチェックをすることが良いと思われます。特に糖尿病のある方は、定期的に検査をすることをお勧めします。

 肝臓の病気や、血液の病気に伴って脾臓(ひぞう)が大きくなる「脾腫」の有無、前立腺について、前立腺の肥大や石灰化の有無も観察します。腹痛で受診されると、胆のう炎や虫垂炎、腎盂(じんう)腎炎、尿管結石といった病気を想定して腹部エコー検査を行います。腸閉塞(へいそく)などのチェックもできます。

 エコーは客観性に乏しい面もあり、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)に比べると空間解像能では劣りますが、日常の診察や血液検査などと併せ、かかりつけ医の総合的な判断に役立つ、良い検査手段です。受診の際に相談されてはいかがでしょうか?

(諫早市高城町)きたじまクリニック 院長  北島 知夫

>> 健康コラムに戻る