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2021年2月1日 掲載

「大腸がん」

日本人に最も多い がん

 がんは、あらゆる病気の中で長年、日本人の死因の第1位を占めています。その中でも、最も患者さんが多いのは「大腸がん」です。国立がん研究センターの統計で2017年、がんと診断された数(がん罹患(りかん)数)が1位となっています。日本人が「最もなりやすいがん」だといえます。

 一生のうちに大腸がんと診断される割合は、男性でおよそ11人に1人、女性でおよそ13人に1人です。20年のがん死亡数予測で、大腸がんは女性のがん死亡原因1位、男性は2位と予想されています。

 この40年ほどで大腸がん患者数は約7倍に増加、この20年で死亡数は1・5倍に増えています。皆さんの周りにも、大腸がんで亡くなったり治療された人がいらっしゃると思います。なぜ増え続けているのでしょうか?

 生活習慣の欧米化が最大の原因と考えられています。大腸がんのリスク要因として、野菜や果物の摂取不足、肥満、運動不足、飲酒などが挙げられています。特に糖尿病があると、大腸がんリスクが1・4倍に跳ね上がります。また、大腸がんになった血縁者がいる人は発症リスクが2〜3倍高くなるとされます。

 しかし、大腸がんは早期発見できれば「治りやすいがん」の一つです。がんが浅い部分にとどまっている早期がんなら、治療後の5年生存率は9割以上と、ほぼ完治が見込め、内視鏡治療が可能です。

 早期発見のためには大腸がん検診(便潜血検査)が大切です。大腸がんは早期の段階では、症状がありません。早期発見のために、40歳以上の人は定期的に検診を受けることが勧められます。

 しかし、大腸がん検診を受けて、要精査なのに大腸内視鏡などの精密検査を受けない人がいるのも現実です。私は、
便潜血陽性にもかかわらず、数年放置して進行大腸がんになってしまった患者さんを、たくさん診てきました。大腸がんで亡くなった人の共通点として「一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない」ことが挙げられます。

 大腸内視鏡検査は、挿入法の工夫、新しい内視鏡の開発、鎮静剤使用などで以前より楽な検査となっています。早期発見のためにも、一生に1度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

 大腸内視鏡検査で、大腸がんになる可能性がある腫瘍性ポリープ(腺腫)が見つかれば、それを取ってしまうことで大腸がんを予防することができます。最近では小さいポリープであれば、日帰り手術も可能となっています。

 ちなみに長崎県は大腸がん検診の受診率が全都道府県中32位と低く、死亡率は全国で6番目に高くなっています(2014年)。 便秘の人 腹痛がある人 排便時に血液が付着する人 大腸がんになった血縁者がいる人 糖尿病の人 飲酒者 喫煙者 肥満傾向にある人−などは、ぜひ大腸がん検診や大腸内視鏡検査を受けてください。それが大腸がんの早期発見、予防につながります。

(長崎市葉山1丁目)ますだ内科・消化器内科クリニック 院長  増田 淳一

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