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2021年3月14日 掲載

「コロナ禍と子どもの近視」

昨年増、外出自粛が影響?

 新型コロナウイルスの影響により、約1年前の2020年3月2日から24日まで、全国すべての小学校、中学校、高校などが要請により臨時休校しました。さらに春休み後も感染拡大が続き、多くの地域で5月下旬まで休校が続きました。その3カ月の間、多くの子どもたちは外出を控え、自宅内で過ごすことを強いられましたが、このことが、子どもたちの近視に大きな影響を与えたのではないかといわれています。

 海外のある報告によりますと、中国の児童の近視の割合が去年に比べて著しく増加し、特に6歳児では19年の5・7%から20年には21・5%に増えたそうです。また、国内においても、京都市の小学校で視力が0・7未満の子どもは、前の年まで5年間は横ばいだったのに、20年には前の年の17%から23%に増加したとの調査結果があります。

 では、なぜコロナ禍で子どもの近視が増えたのでしょうか。まず、近視の目の状態について改めて説明します。

 目の中に入った光線は角膜や水晶体で屈折され1点に集まります。その集まった位置が網膜より手前にある状態を近視といいます。眼球が前後に長い(眼軸が長い)ほど、近視が強くなりやすいといえます。

 幼児期はまだ眼球も小さいため、眼軸が短いことが多いのですが、体の成長とともに眼球も大きくなり、眼軸も伸びるため近視化していきます。その際、近見作業といわれる30センチ以内の距離のものを見る作業をする時間が長いほど、その状況に適応しようとして、脳は眼球に近視になるようにサインを送り、眼軸が伸びて近視が強くなります。

 昨今のスマホやタブレットの普及により、子どもが親のスマホなどでゲームをしている姿をよく見掛けます。このように子どもが画面の小さなスマホを近くで見る機会が多くなり、近視の発症の若年化が進んでいるといわれています。
そこに今回の外出自粛が重なったため、子どもの近視の割合が著しく増えたのだと思われます。

 近視になれば、何か大きな問題が起こるのでしょうか。メガネをかければ矯正できるため、これまであまり問題視されませんでした。しかし、近年の疫学データから近視、つまり眼軸が長くなることが将来、目の病気にかかる確率に大きな影響があることが分かりました。

 眼軸が長くなると網膜や視神経も引き延ばされて薄く、弱くなります。そのため軽度の近視であっても、近視がない場合と比べて将来、網膜剥離になるリスクは3倍、強度近視であれば22倍にもなります。ほかにも、緑内障になるリスクが軽度の近視で4倍、強度近視で14倍高くなり、白内障も強度近視では5倍高くなります。

 近視を防ぐために、読書や書き物をする時は十分な明るさの下で、少なくとも30センチ以上目から離し、30分に
1度は休憩して遠くを見ましょう。コロナ禍で外出が難しい状況ですが、日光に当たることも近視の予防になるといわれています。外で過ごす時間も、なくさないようにしましょう。

(大村市小路口町)たかはた眼科クリニック 院長  高畑 太一

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