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2021年4月19日 掲載

「尿の検査」

症状ない病気を見つける

 尿は、腎臓で血液をろ過して作られる、体の不要な水分や老廃物です。腎臓は腰の上の辺りに背骨を挟むように2個あります。腎臓には、尿を作る以外にもホルモンの分泌、体の中のバランスを取る働きなどがあります。

 健診を受けたり医療機関を受診したりすると「おしっこをコップに取ってください。検査をします」と、よく言われます。尿を検査して何が分かるのだろうと、疑問に思うことはありませんか。

 尿を調べることで、症状が出ていない病気を早期に見つけることや、診断を受けた病気の経過をみることができます。今回は、たくさんの種類がある尿の検査の中で、健診でもよく行われる尿タンパク、尿糖、尿潜血の各検査について説明します。

 【尿タンパク検査】尿に含まれるタンパクを調べる検査です。正常でも、過度な運動、大量の飲酒、脱水でも認めることがあります。検査を受ける際、体重を気にするあまり前日から水分制限をやり過ぎると、脱水となり尿タンパクを認めることがあります。水分制限はほどほどにして検査を受けてください。

 尿タンパクを指摘された時は、一時的なものなのか、腎臓の病気なのか、あるいは他の病気なのか、しっかり診断を受ける必要があります。特に腎臓の病気では、自覚症状がなく進行することがあり注意が必要です。

 腎臓の病気が進行すると腎臓機能低下を来し、最後には血液透析を受けなければなりません。既に悪くなった腎臓機能を回復させるのは、今の医学でも困難です。それを避けるためにも、健診を定期的に受け、異常を指摘されたら精密検査を受ける必要があります。

 【尿糖検査】尿に含まれる糖を調べ、主に糖尿病を見つけるための検査です。尿糖が陽性でも糖尿病とは限らず、血糖などの検査で確認する必要があります。

 【尿潜血検査】尿に含まれる血液(赤血球やヘモグロビンという赤い色素の基)を調べる検査です。尿潜血は、尿が作られる腎臓や尿の通り道の重要な病気のサインです。これらの病気の中には、がんや腎臓病など命の危険を及ぼすものがあります。

 尿は健康状態や生活環境によって変化しています。また尿は、自覚症状が出てくる前に体の中の小さな変化を起こして、病気の前兆を知らせてくれます。病気によっては、病状がかなり進行しても見た目の尿の異常がなく、尿の検査で病気が見つかった時には、かなり進行していることがあります。

 新年度が始まり、職場や学校で尿の検査を受ける機会があると思います。尿検査は、健診では必ず行われる検査です。検査自体も、尿を取るだけの痛みも何もない検査です。尿検査だけでは最終診断できませんが、何か病気の前兆が分かるかもしれません。もし尿検査で異常を指摘されたら、できるだけ早く泌尿器科や腎臓内科を受診しましょう。

(長崎市川口町)さかぐち泌尿器科 院長  坂口 幹

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