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2021年6月7日 掲載

「AYA世代のがん」

体と向き合い早期発見を

 皆さんは、がんという病気に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。

 現在がんの治療をしている、家族や友人ががんにかかり闘病生活を支えたことがあるなど、これまで関わりを持って きた人も多くいることでしょう。がんに対するイメージや解釈も、それぞれにあるかと思います。中には「がんという病気は知っている。なんとなく怖い病気というイメージはあるけれど、まだ自分には関係ないかな」と思う人もいるかもしれません。

 がんの診療をしている中で、患者さんが「私ががんになるとは思わなかった」と口にすることが多々あります。性別や年齢に関係なく、多くの人はそう考えます。日常の中で自分に、がんの可能性があると考えながら生活している人は、そんなにいないでしょう。若い人はなおのことです。

 「AYA世代」という言葉があります。「思春期(Adolescent)と若年成人(Young Adult)」を合わせた世代という意味で、だいたい15〜39歳を指します。がんは全体的にみると年長の成人に発症することが多く、AYA世代に発症すること自体は少ないとされています。しかしながら、AYA世代の病死の原因の中で一番多いのはがんです。病死以外を含めた死因でも、自殺や不慮の事故に次いで多いのです。

 AYA世代は小児期と成人期の移り変わりの時期です。身体的、精神的、社会的に大きな変化を来します。10代では白血病、脳腫瘍、リンパ腫、性線腫瘍、骨軟部腫瘍などの、いわゆる小児がんが多く、年齢が上がるほど乳がん、子宮がん、大腸がん、胃がん、肺がんの割合が増加してきます。

 AYA世代は学生や社会人として多忙だったり、育児や介護などさまざまなライフイベントに直面していたりといった、それぞれの背景があります。年長成人世代と比較して、がんということを積極的に考えられないことや、生活や学業、仕事の方が忙しいことから受診、診断が遅れる場合もあります。がんと向き合うには、治療と同時に、病気によって引き起こされる身体的、精神的、社会的な変化に対する包括的なサポートが特に必要となってきます。

 医療従事者は、目の前にいる患者さんの年齢や性別にかかわらず、患者さんの背景にも目を向けながら治療を行っています。患者さんの状況がうまくいっているとうれしいものです。患者さんがつらい状況だと医療従事者も悩みます。多職種間で話し合いを行い、どのようなサポートが必要かを考えます。

 若い世代の人が、がんになることだってあるのです。皆さん、忙しい日々を過ごしていると思いますが、時には自身の体と向き合ってみましょう。早期発見、早期治療に越したことはありません。年齢や性別は関係ありません。AYA世代も年長成人世代も、がんに関することでなくても、心身の不調や心配なことがあったら、かかりつけ医や地域の医療機関にご相談ください。

(長崎市籠町)かご町サトウ医院 院長  佐藤 綾子

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