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2021年6月21日 掲載

「燃え尽き症候群」

コロナ関係の業種で増加

 燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、世界保健機関(WHO)の最新の国際疾病分類(ICD−11)において「健康状態に影響を及ぼす要因」として、「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスに起因するもの」と定義されています。特徴としては (1)エネルギーが枯渇、または消耗したという感覚 (2)仕事に対する心理的距離の増加、もしくは仕事に対する否定的あるいは冷笑的な感情 (3)職務上の能率の低下−を指すとされます。

 ICD−11では疾病ではなく、「職場の問題」としており、精神疾患の分類としては、業務量過多による反応性のうつ病や適応障害の概念に重なります。例えば、献身的に仕事に取り組んでいる方が、こなすことができないほど業務量が増加し、その割には見合う評価がなされていないと感じることがあり、仕事へのモチベーションが低下してきているような場合を挙げることができます。

 対面業務のある方が、絶えず笑顔や冷静さを求められることに感情が疲弊し、機械的・マニュアル的な受け答えをしてしまう時は、要注意です。想定外の先の見えない状況で、特に顧客対応(いわゆる「感情労働」)において、心身をすり減らすことが増えているのでしょう。

 例えば医療・介護、総務、教育、公務員等といった業種の方は、さまざまな新型コロナウイルス感染症対策に駆け回る日々と思います。このような方が燃え尽き症候群の状態となって、私のクリニックにお見えになることが増えています。

 新型コロナの感染拡大をきっかけに担当業務が急増し、熱心に取り組んだ結果、ある時、頭が真っ白になって仕事が手につかなくなった方がいました。感染症予防対策の部署に急きょ転属になって、クレーム対応に心身をすり減らした方もいました。コロナ禍の今、燃え尽きを防ぐためには、どうしたらよいでしょうか。

 それには、自分自身を常にモニタリングしていくことが大切だと思います。今与えられた業務や立場が自分に合っているかどうか、特にオーバーワークになっていないかどうかについて、気付きのアンテナを高くしておくことです。できれば「腹八分」が大切です。具体的には、自らの能力、勤務時間、業務内容、業務量、立場、評価がマッチしているか、人間関係を含めた労働環境は適切か、 の二つだと思います。

 加えて、感情労働者においては、顧客対応に当たって求められる接遇や感情のコントロール(アンガーマネジメント)が大切です。ささいな不満や悩み、理不尽を感じることがあれば、ストレスで体調を崩す前に、それを積極的に言葉にし、自らその改善に動いてみてください。管理者は職場環境や、部下の心身の体調に責任を持つ立場にあります。相談があれば改善に動くようにしましょう。

 体調を崩してしまった際には、精神科・心療内科のクリニックも皆さんを助けてくれると思います。

(長崎市浜口町)田川クリニック 院長  林 健司

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