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2021年7月5日 掲載

「良い睡眠」

昼間眠い時は注意を

  皆さんは良い睡眠がとれていますか? バランスの良い食事、適度な運動に加え、良い睡眠は健康を維持するために不可欠なものです。ただ眠れば良いというのではなく、積極的に良い睡眠をとるようにしましょう。良い睡眠がとれているかどうかは、睡眠の量、質、リズム−の三つに分けて考えると良いでしょう。

 睡眠の量、すなわち睡眠時間は人それぞれです。6時間で十分な方もいれば、9時間以上必要な方もいます。睡眠不足かもしれないと思ったら、まずは十分な睡眠時間を確保してください。それでも昼間の眠気があったり熟眠感がなかったりする場合、何らかの睡眠・覚醒障害の可能性があります。

 寝ている時に大きないびきや呼吸が止まっていることを指摘された方は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の可能性があります。新型コロナウイルス禍で体を動かす機会が減り、体重が増えた方は要注意です。中年男性に多いのですが、マウスピースや「CPAP(シーパップ)」と呼ばれる治療法があります。

 いくら睡眠をとっても、昼間に眠気がくる睡眠・覚醒障害としては「過眠症」があります。10代など若年層での発症が多く、学校の授業や仕事中にいつも眠っていることで気付かれます。「レム睡眠行動障害」は高齢者に多い疾患です。夢の通り叫ぶような寝言やたたく殴るなど暴力的な動きが出現します。

 寝ている時のことは自分では分かりませんので、睡眠障害の診断には客観的な睡眠検査が必要です。SASを疑った場合には自宅でできる簡易検査を行い、酸素濃度、呼吸状態などを記録します。

 本格的に睡眠の状態を評価する必要がある場合は、専門の医療機関で「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」を受けて頂きます。一般的に夕方に入院してPSGを受け、翌朝退院となります。特に睡眠専門検査技師が監視する検査(アテンド検査)では、行動異常の確認や確実な記録ができるため、検査の精度が向上します。

 睡眠・覚醒障害の中には、寝入りばなに脚がムズムズして眠れないという「レストレスレッグス症候群」という病気があります。脚を動かすと楽になりますが、まだまだ社会的に認知されておらず、未診断・未治療の方も多いようです。お薬の服用などで軽くなることがあります。

 昨今は夜ふかしする方が増えています。スマートフォンで夜遅くまで動画を見たり、会員制交流サイト(SNS)のやりとりをしたりすることで、頭に刺激が入った状態が続くため、入眠に時間がかかる、睡眠時間が短くなる、なかなか起きられない、昼間にだるさが出る− などが起きます。スマートフォンなどのブルーライトの光刺激は、メラトニンという睡眠物質を抑えて眠りにくくします。寝る2時間ほど前からは光刺激を避けるようにしましょう。

 朝のだいたい決まった時刻にすっきりと目覚め、昼間に眠気がなく、また不眠もなければ、多くの場合睡眠に問題ありません。もし問題があると思われたら、かかりつけの医師か睡眠専門医にご相談されることをお勧めします。

(長崎市宝町)井上病院 院長  吉嶺 裕之

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