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2021年7月19日 掲載

「新型コロナと糖尿病」

外出、受診自粛で悪化も

 2019年末に第1例目が報告され、またたく間に世界的な大流行をもたらした新型コロナウイルス感染症(COVID−19)。いまだ収束の兆しが見えない状況下で、多くの方が不自由な生活を強いられています。そんな中、糖尿病の患者さんはどのような生活を送れば良いのでしょうか。

 糖尿病とCOVID−19の関係性について、世界各国で多くの研究がなされていますが、いまだ確実な見解は確認されていないのが現状です。糖尿病患者は、他の重症化リスク因子である心血管疾患や慢性腎臓病、肥満症などが併存している場合が多く、糖尿病でない人に比べ、COVID−19を発症した場合の死亡リスクが2〜3倍に上昇することが報告されています。

 一方、最近のヨーロッパからの報告で、糖尿病患者がCOVID−19を発症した場合、血糖コントロールが不良だと重症化しやすいという調査結果が発表されました(欧州糖尿病学会雑誌2021)。糖尿病であっても血糖コントロールが良好であれば重症化の危険性は抑えられると考えられ、逆に糖尿病の状態が不良なままで感染すると病状が重くなる恐れがあります。糖尿病のタイプ(1型、2型など)、年齢、合併症の有無にかかわらず、血糖コントロールを良好に保つために、しっかりと治療に取り組むことが大切です。

 一人一人の基本的な感染症対策として、密集、密閉、密接の「3密」を避けるための身体的距離の確保、手指衛生やマスクの着用などを心掛けることが大切です。しかし、COVID−19を過度に恐れて自宅に閉じこもってしまった結果、最近では活動量や運動量が減少し、食事が偏ってしまい、体重増加や血糖値上昇を来してしまう糖尿病患者が増えています。

 さらに高齢者の中には、ほとんど外出しなくなり、筋肉量が著しく減少してしまう方も多く、そういう方は寝たきりになってしまう危険性が高くなってしまいます。体重増加や高血糖、さらには筋肉量の減少を防止するためには、感染に十分に注意しながらも、活動や運動を心掛け、食事の取り方にも十分に注意する必要があります。

 また、外出自粛を理由に医療機関への受診を極端に控えることは、血糖コントロールの悪化や大きな病気の見落としにつながる可能性があります。主治医の先生とよく相談しながら、受診を継続することがとても重要です。

 糖尿病以外にも、COVID−19が重症化しやすい基礎疾患として、心臓の病気、慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などが挙げられます。感染を過度に恐れて医療機関受診を中断したり、生活習慣を極端に変更することのないように、しっかりと考えて行動しましょう。

(長崎市宝町)井上病院 院長  吉嶺 裕之

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