>>健康コラムに戻る

2021年8月2日 掲載

「小児のてんかん治療」

正確な診断が大切

  「てんかん」という病気について、皆さんはどのようなイメージをもっていますか? 患者さんのご家族に初めて病気の告知を行い、てんかんについての印象を聞くと「一生内服を続ける必要がある(治らない)」「副作用がきつい」「知的障害を残す」といった不安が多くみられました。

 しかし、てんかんはたくさんの症候群からなり、予後もさまざまです。小児のてんかん全体のうち約8割は抗てんかん薬の内服で発作が消失し、そのうち約半数で内服を中止することができたとする報告もあります。

 欧米と比較し、日本の抗てんかん薬の発売状況は長年遅れてきましたが、2006年から9剤が新規に発売されました。この中には特殊な症候群に対する治療薬も含まれていますが、治療選択の幅が増え、てんかん発作の抑制に効果を発揮しています。

 てんかんの治療で大切なことは、てんかん症候群のうち、どの症状にあてはまるのか、発作型はどれかについて、正確な診断を行うことです。てんかん発作の様子、発作後の様子、発作持続時間、発作のタイミング(起床時か、入眠中か、運動中かなど)てんかんや他の神経疾患の家族歴があるかどうか−など、詳しく聞かせていただくことになります。

 同時に、てんかん以外の疾患の可能性はないか判断することも大切で、鑑別のため、さまざまな検査を行う場合があります。

 てんかんといえば脳波検査と思われがちですが、外来で行う脳波検査で、必ずてんかん波が出現するわけではないため、注意が必要です。何度か脳波検査を繰り返したり、長時間脳波モニタリングを行ったりすることもあります。頭部磁気共鳴画像装置(MRI)等の検査を行うこともあります。

 こうして、てんかん症候群のどれにおおよそあてはまるか、発作型はどれかの見当がつくと、それに合った抗てんかん薬を開始することになります。新規抗てんかん薬は、てんかん発作型の有効範囲が広いものが多く、従来の古典的抗てんかん薬による治療から今後、変わっていくものと思われます。

 また、抗てんかん薬の効きにくいてんかん患者の中には、外科治療の有効な方がいらっしゃいます。外科的治療といっても多くの方法があり、てんかん発作を起こす大脳皮質の一部を切除・離断(りだん)する方法、左右の大脳を連絡する神経線維である脳梁(のうりょう)を離断する方法、迷走神経刺激装置を埋め込む方法などがあります。

 どの治療法が最適かは、てんかんの原因や、てんかん焦点の部位によって異なります。てんかん焦点を推定するため、長時間脳波モニタリングや、脳の代謝をみる検査「PET−CT」、脳血流をみる「脳血流シンチグラム」等の検査を行うことがあります。何年間か抗てんかん薬の内服治療を行っても、抗てんかん薬を何剤も試しても、なかなか発作が止まらない場合には、外科治療はできないか、主治医の先生に相談されるとよいと思います。

(西彼時津町)ひなみこどもクリニック 院長  渡邊 嘉章

>> 健康コラムに戻る