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2021年9月6日 掲載

「ロコモの予防」

全年代で運動器ケア必要

 「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」は、骨・筋肉・軟骨・神経など運動器の障害により、歩いたり立ったりする人間の基本的な移動機能が低下した状態と定義されています。高齢化の急速な進行により運動器障害の問題が深刻化 する可能性があり、予防や治療に対する国民の啓発のため、この概念が提唱されました。

 ロコモの原因となる疾患は多岐にわたります。骨粗しょう症、変形性脊椎症、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、加齢で筋肉量が減少するサルコペニアなどです。全国で約4700万人がこれらの疾患を抱えています。要支援・要介護 認定者は600万人を超え、そのうち4分の1は転倒、骨折や関節の病気など運動器障害が原因です。

 運動機能の低下が表面化するのは、主に高齢期になってからですが、潜在的な運動機能低下、つまりロコモ予備軍は 30〜40歳代でも見られます。けがや病気により元々運動器の障害がある人も含めると、若年であってもロコモになる可能性があります。健康診断などでロコモの評価を活用し、若い世代の行動変容を促すことが予防に大事です。

 ロコモの進行具合や程度を評価するためには、次のような「ロコモ度テスト」を行います。

 (1)立ち上がりテスト‥片脚または両脚でどれくらいの高さから立ち上がれるか測ります。
 (2)2ステップテスト‥できるだけ大股で2歩歩いた距離を測り、自身の身長で割ります。
 (3)ロコモ25‥運動器の不調に関する25の質問に答えます。

 これらの結果により、ロコモが始まっているか、始まっているとしたら、進行度(3段階)はどの段階かを判定します。社会参加に支障を来している場合、最も深刻な「ロコモ度3」と判定されます。

 ロコモは高齢者に限った問題ではなく、子どもでもスポーツのやり過ぎによって運動器が故障することがあります。 逆に全く運動しないことで運動器機能の低下が進んでも、けがの原因になります。将来的にロコモ予備軍にならないためにも、子どものときからの運動器ケアが重要です。

 ロコモの原因となる疾患の治療についてですが、外来を受診される方々のほとんどは、まず生活指導から始まり、薬物療法、運動療法、物理療法を組み合わせて症状を和らげる保存的治療を行います。それでも効果がない場合は手術を 選択します。

 ロコモは比較的若い時から少しずつ、知らない間に進行します。適度な有酸素運動などを日常生活に取り入れることで予防に努めてください。

 また、コロナ渦で外出を自粛し、診療にも行けないという方が増えていると思われますので、ロコモを予防するトレーニングを日頃から行いましょう。まずは左右1分間ずつ片足立ちを1日に5セットしたり、1セット5〜6回のスク ワットを1日に3セット以上やってみてください。運動器を健全に保つことで健康寿命を伸ばしましょう。

(島原市親和町)いでた整形外科クリニック 院長  出田 聡志

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