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2021年9月20日 掲載

「運動器不安定症とロコモ」

高齢者の「生活の質」に影響

 最近足腰が不安で、1人で外にでられなくなっていませんか? 運動器不安定症(MADS)は、高齢者が歩行・移動能力の低下のために転倒しやすくなり、閉じこもりになるなど、日常生活での障害を伴う疾患をいいます。 一方、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」は、運動器の障害による要介護の状態および要介護リスクの高い状態をいいます。どちらかは耳にされたことがあるのではないでしょうか。

 MADSの診断は、運動器系の病気の有無と現在の生活動作の状況で診断します。
 原因となる代表的な病気は以下の11疾患があります。
(1)脊椎圧迫骨折 (2)脊柱変形(側わんなど) (3)大腿骨頚部(だいたいけいぶ)骨折などの下肢骨折 (4)骨粗しょう症 (5)変形性関節症(膝、股関節) (6)腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症 (7)脊髄損傷 (8)神経・筋疾患 (9)関節リウマチなど (10)下肢切断後 (11)長期臥床後の運動器廃用・高頻度転倒者−です。

 例えば、外出に介助を要するようになった方は既にMADSに当てはまる状況です。1人で外出できる方は次の動作をチェックしてみましょう。

 ・開眼方脚起立テスト=両手を腰にあて片足を床から5センチ程度上げ、立っていられる時間を測定。15秒立っていられるか?
 ・TUGテスト=椅子に座った状態から立ち上がり、平地3メートル先の目標まで歩いて折り返し、再度着席するまでの時間を測定。11秒以上かかっていないか?

 11疾患はよく診る疾患で、既に診断を受けていらっしゃる方もあるかと思います。 その場合当然、それぞれの疾患で治療が進んでいるはずです。 では、なぜ、MADSやロコモについて再度検討する必要があるのでしょう。 それは、一つの原因疾患の治療だけでは、患者さん個人の生活の質が向上しないからだと考えています。

 生活の質は漠然とした言葉ですが、私は患者さん一人一人で違う意味合いをもつ言葉だと思います。
 安全にけがなく家で暮らしたい、散歩に行きたい、ドライブに行きたい、孫に会いたい、おいしいものを食べに行きたい、旅行に行きたい− などの動きたい目標がある場合、運動器関連のリハビリテーション介入や介護サービス(デイサービスやデイケア、訪問リハビリテーション)の利用により、目標を達成できる可能性は多いにあります。

 現在は新型コロナウイルス禍にあり、気軽に外出できず、若い世代でさえ運動不足の増加が社会問題になっています。中高齢の方の自宅への閉じこもりも、多くみられている現状です。

 運動器障害は徐々に気づかれないまま進行します。もし現在、状況に心当たりがある方や、その家族の方は、病気のせいや年のせいにして諦めてしまわないでほしいのです。近くのかかりつけ医に相談していただくことをお勧めします。

 新型コロナ禍においても、できることはたくさんあります。 少しでも毎日が楽しくなれば、心身ともに元気になれます。それが真の介護予防につながります。少し勇気を出してみませんか?

(長崎市京泊3丁目)こんどう整形外科院長  近藤 超子

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