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2021年10月18日 掲載

「新型コロナウイルス感染症と皮膚」

発症後に皮疹や紅斑

 2019年12月に中国で始まった新型コロナウイルス感染症(COVID−19)が世界的な大流行になり、はや 1年半が過ぎました。世界の様相は大きく変わり、皆さんの周りの環境も、いや応なしに変化してしまったのではないでしょうか。

 COVID−19によって生じる症状としては、発熱や倦怠(けんたい)感、呼吸器症状、重症肺炎が有名です。また、嗅覚異常など思わぬ合併症がもたらされることも、よくご承知のことかと思います。ところが、皮膚症状について は、あまり知られていません。そこで今回は、COVID−19によって生じる皮膚症状について触れてみたいと思います。

 最も多く現れる皮膚症状は、手足の先に生じる「凍瘡(とうそう)(しもやけ)様」の皮疹(発疹)です。当初は感染初期の特徴的な症状かもしれないと注目されました。しかし、その後の解析により、発熱や倦怠感などCOVID−19の典型的初期症状が発症したのと同時期、あるいはその後に生じる例が多いことが分かってきました。

 他の皮膚症状として、じんましんや、はしかのような紅斑、水疱(すいほう)を伴う紅斑が挙げられます。いずれも感染成立後の発症が多いようです。幸い、これらの皮膚症状は、感染が落ち着くにつれて改善に向かうことが多いとされています。

 一方、各種メディアで感染後の「脱毛」がピックアップされることがありました。脱毛については、まとまったデータはないのですが、多くはCOVID−19にかかって2、3カ月後の休止期脱毛(発熱やストレスなどで生じる一時的な脱毛)とされています。このため回復の見込みがあることは幸いです。もし、発疹や頭皮のかゆみ、あるいは灼熱(しゃくねつ)感がある場合は別の原因があるかもしれませんので、皮膚科医への相談をご検討ください。

 また、コロナワクチンに伴う皮膚反応についてもさまざまな症状が報告されています。最も有名なのは、いわゆる「モデルナアーム」で注射部位の紅斑です。今までの報告を見ますと、初回接種時に紅斑の発生率が高く、2回目では反
応が乏しくなることが多いといわれていますが、個人差が大きく必ずしもそうとはいえない例もあります。

 じんましんや紅斑が、注射部位と関係なく生じた例もありますし、手足の腫れや痛みを生じる方もいました。今後3回目のワクチン接種が世界的に検討されており、さらなる解析が待たれるところです。

 COVIDー19の拡大により、われわれも日常診療の制限を余儀なくされ、皆さんも不安な日々が続いていると思います。皮膚がんをはじめとしたがん領域では、受診控えの影響から、がんの発見が遅れる可能性を懸念する声があります。不整形のシミやほくろ、崩れて治らない皮膚のできものなどがありましたら、早めに皮膚科医へご相談ください。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科講師  鍬塚 大

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