>>健康コラムに戻る

2022年2月21日 掲載

「若々しい声を保つ」

乾燥予防に十分な水分補給を

 のどには左右一対の声帯というひだがあり、これが吐く息で振動して、声の元となるブザーのような音がつくられます。のど・口・鼻からなる空間の形が変わると共鳴によりその音色が変わり、「あ」「い」などの異なる話しことばとなって、口から出てきます。

 加齢は全身に影響を与えますが、声についても例外ではありません。年を重ねるにつれ次第に皮膚が薄くやせていくように、声帯にもやせが生じます。また、粘膜は乾燥しがちで、吐く息は弱く少なくなり、のど・口の動きも遅く不完全となるなどの変化がみられます。

 その結果、徐々に弱くてハスキーな歯切れの悪い声になっていき、痰(たん)もからみやすくなります。女性の場合は声帯のむくみによって、ガラガラした印象の声になる方もいます。また、声の高さも年齢とともに変化します。男性は思春期に低い声になりますが、老年期には声が高めになります。女性は閉経期以降、声が低くなる傾向にあります。

 しかし悲観する必要はありません。足腰などの働きは、高齢になっても適度な運動を続けることにより、ある程度維持することができます。同様に、あまり知られてはいませんが実は声についても、日常生活における注意や適切な訓練によって、ある程度その働きを保つことができるのです。
 まずは 喫煙 長時間話す 大声を出す 咳(せき)や咳払い 室内の乾燥や埃(ほこり)−といった、声帯に悪い影響を及ぼす習慣や生活環境を避けることが大切です。

 また、良い習慣として水の摂取が特に重要です。粘膜の乾燥予防に必要な飲水量は1日あたり1・5リットルとされています。声の調子がおかしい時は、さまざまな薬を試すより、まずは水を十分に取ることを心掛けてみてはいかがでしょうか。ただし、心臓や腎臓の疾患などで飲水を制限されている方を除きます。

 ストレスは筋の過緊張などをもたらし、声にも影響します。精神面を含め健康に気をつけ、過労や寝不足の際は発声を控えましょう。無理のない適度な歌唱や朗読は、声帯にとって良い刺激となり、粘膜や筋肉の維持に役立ちます。鼻歌(ハミング)も効果的です。

 より積極的に声の改善を希望される方には、病院で言語聴覚士による音声訓練や、声帯のやせに対して声帯内注入術を行うこともあります。なお、声の悪化は喉頭がんのような腫瘍、ポリープ、胃酸逆流、アレルギーなどの疾患で生じることもありますので、明らかに声が悪くなったと感じたときは、念のため一度、お近くの耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

 声は重要な意思伝達の手段ですが、個人の個性や魅力を表現するという側面も持っています。良い声だと嚥下(えんげ)機能も保たれ、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。歌うことが趣味という方も多いでしょう。声を若く保ち、明るく健康に過ごしたいものです。

(長崎市片淵2丁目)済生会長崎病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 部長  金子 賢一

>> 健康コラムに戻る