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2022年3月7日 掲載

「減塩など生活習慣修正を」

減塩など生活習慣修正を

 血圧は、心臓が収縮する時に、大動脈とその先の動脈にかかる最も高い圧(収縮期血圧=いわゆる上の血圧)と、心臓が拡張する時に大動脈・動脈にかかる圧(拡張期血圧=下の血圧)とで表されます。単位は「mmHg(ミリメートル水銀柱)」です。

 高血圧は、病院・クリニックで測る診察室血圧において、上の血圧が140以上、または下の血圧が90以上、もしくはこの両方を満たす時に診断されます。また、家庭血圧では診察室血圧より5ずつ低い135/85以上となります(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」)。

 血圧は日々の生活の中で、体調や活動状況などの影響で変動しますが、病院受診の度に「血圧が高い」と言われたり、起床後や就寝前の家庭血圧がいつも135/85以上であったりしていませんか?
近年、高血圧は日本で約4300万人の患者がいると推定されており、国民病の一つといえます。

 高血圧は“サイレントキラー”とも呼ばれ、通常は症状をあまり感じません。しかし、持続的に動脈へ必要以上の負荷をかけ続け、動脈硬化を進めます。結果的に脳心血管病である脳卒中、心疾患(心不全や狭心症・心筋梗塞)や慢性腎臓病(進行すると血液透析などが必要となる末期腎不全)を引き起こし、普段の生活に大きな支障を来します。従って高血圧対策は、ただ血圧の数値を下げるのが目的でなく、動脈硬化に伴う脳心血管病の発症リスクを減らし、健やかに長生きすることを目指すのが目的です。

 血圧を下げる目標値は、75歳未満は診察室血圧で130/80未満、75歳以上では140/90未満です。家庭血圧では診察室血圧より5ずつ低い値が目標です。

 対策は生活習慣の修正( (1)減塩 (2)運動 (3)節酒 (4)禁煙 )と、降圧薬による治療が主となります。生活習慣の修正は、それ自身が血圧低下に有効であると同時に、降圧薬の作用を強め、薬の量を減らすことにもつながります。

 (1)減塩は1日当たり6グラム未満が目標です。加工食品からの摂取が多いため、食品成分表示で食塩量をチェックする習慣をつけましょう。

 (2)運動は、ここ数年の新型コロナウイルス禍で、定期的な運動習慣を止めてしまう方が増えています。毎日30分の有酸素運動が望ましいですが、屋内でも可能な踏み台昇降(ステップ)運動はいかがでしょうか。20センチ程の高さの踏み台(または階段)で、まずは10分、無理のないペースで行ってください。

 (3)飲酒は1日あたり日本酒1合またはビール中瓶1本程に留めてください。

 (4)禁煙は、自身の禁煙だけでなく、周囲の家族や同僚等からの受動喫煙にも注意する必要があります。

 降圧薬はカルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬など、さまざまな種類があります。生活習慣の改善を頑張っているけれど、なかなか血圧が下がらない方は、かかりつけ医にご相談ください。高血圧対策をしっかり行い、健康な未来を守りましょう。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院循環器内科 助教  佐藤 大輔

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