>>健康コラムに戻る

2022年4月18日 掲載

「顔の皮膚腫瘍」

気を付けたい三つのがん

 ひと口に顔の皮膚の腫瘍といっても、たくさんの種類があります。私たちも日常診療において、患者さんとお話しする際に毎回必ず患者さんの顔を見るため、多くの腫瘍を見かけます。

 紫外線の影響や皮膚の老化が原因と考えられる脂漏性角化症(年寄りイボ)、皮膚にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染して起きる尋常性疣贅(ゆうぜい)(ウイルス性イボ)、単純黒子や色素性母斑(いわゆる「ほくろ」)−などの良性腫瘍であることが多いのですが、まれにがんの場合があります。ここでは、特に気を付けなければいけない三つのがんについて、お話ししたいと思います。

 まずは日本人に最も多い「基底細胞がん」です。皮膚は表面から順に表皮、真皮、皮下組織に分かれますが、基底細胞は表皮の一番下の層に存在します。このがんは黒いことが多く、転移はまれで手術で治るのですが、目や鼻の周囲など簡単には切除できない場所にできることが多く、厄介です。

 次に有棘(ゆうきょく)細胞がんです。表皮の一部である有棘層に紫外線の影響で生じる「がんの卵」、日光角化症から進行することが多く、転移することがあるため早めの治療が必要です。普段から日光に当たる機会の多い農業、漁業従事者などに多く見られます。防止には紫外線対策が大切です。自分は大丈夫と思わず、しっかり紫外線を防御しましょう。

 最後に忘れてはならないのが「ほくろのがん」とも呼ばれる悪性黒色腫です。皮膚の色と関係が深いメラニン色素を産生する「メラサイト」という皮膚細胞が悪性化するのが原因です。人種により発生差があり、白人に最も起きやすいとされます。日本人では足の指や足の裏にできることがよく知られていますが、実は顔にできることも多いがんです。 非常に転移しやすく進行も早いため、特に注意を必要とします。

 これら三つのがんは、いびつな形をしていたり、出血を伴ったりすることも多く、比較的早く増大してくることが共通する特徴です。それだけに、早期に発見すればするほど、手術で治る可能性が高くなります。

 顔の皮膚がんの患者さんが皮膚科を受診するきっかけとして、「家族や知人に指摘されたから」という理由を多く耳にします。毎日のように鏡を見ていると、徐々に起こっている自分の顔の変化には気付きにくいものです。家族や知人の方が気付きやすいのでしょう。

 しかし最近では、新型コロナウイルス禍によりマスクをすることが日常的になったことで、周囲も微妙な変化に一層気付きにくい環境になっていると言えます。ときには鏡で自分の顔をまじまじと見つめる時間をつくり、「気になるできもの」があるようでしたら、皮膚科で相談してみてください。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院皮膚科・アレルギー科 助教  岩永 聰

>> 健康コラムに戻る