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2022年5月16日 掲載

「便秘」

体重減や血便に注意

 朝、すっと便が出ると、1日気分よく過ごせるということはありませんか?
便は健康のバロメーターともいわれ、便秘の日はなんとなく気分がスッキリしないという方も多いと思います。

 便秘があると、生活の質(QOL)が下がるだけでなく、仕事や家事に不都合をきたすなど、さまざまな悪影響が表れてきます。近年では慢性便秘から食欲の低下や栄養障害、筋力低下(サルコペニア)を引き起こし、心身の活力が低下した状態(フレイル)につながると考えられています。また、便秘の患者さんは便秘ではない患者さんに比べ、心筋梗塞や脳卒中などを発症しやすく、生命予後(病気の後にどれだけ長く生きられるか)が悪いという報告もあります。

 注意しなければならないのは、便秘には“危険な便秘”があることです。排便習慣の急激な変化や体重減少、便に血が混ざるなどの症状がある場合は、大腸がんなどが潜んでいる可能性がありますので、すぐに病院を受診する必要があります。

 便秘の程度は軽症から重症までさまざまですが、日本人の10〜20%の人が便秘であると考えられています。排便回数が少ないだけでなく なかなか便が出ないため、いきんでしまう 排便しても便が残っているようでスッキリしない いつもおなかが張っている− などの症状があり、検査や治療を必要とする場合を「便秘症」といいます。本来は体外に排出すべき便を、十分量かつ快適に排出できない状態が続くために、日常生活に支障が出ていると、慢性便秘症と考えられます。

 慢性便秘症の発生には、いくつかの原因が挙げられます。一つは、少ない水分摂取量などにより便が硬くなることです。また、腸の動き(ぜん動)が低下していることも原因の一つです。便意を我慢する習慣があると大腸の感覚が鈍り、便がたまっても便意を感じにくくなるため、さらに症状が悪化します。

 便秘症を改善するための第一歩は、食習慣や生活習慣を見直すことです。食物繊維が多い食事が便秘によいことはよく知られていますが、適度な水分を取り、1日3食、特に朝食をきちんと食べることが大切です。ヨーグルトや乳酸飲料を利用して、腸内細菌のバランスを正常にすることも有効です。散歩やジョギングなどの適度な運動をして、十分な睡眠時間をとるなど規則正しい生活リズムを整えましょう。

 便秘薬にはさまざまな種類があり、新しい治療法もあります。通常はなるべく作用の穏やかな薬を使いながら、少しずつ自然に排便できるように治療します。ご自身の判断で市販薬を常用し、症状を悪化させてしまう方も少なくありませんので、症状に合ったお薬を医師に処方してもらいましょう。

 お薬でも改善が見られない場合には、便秘に関して専門性が高い医療機関で詳しい検査を受けるようにしてください。まずは、正しい食習慣・生活習慣を心がけ、便秘を正しく治療して、心地よい毎日を目指しましょう。

(長崎市葉山1丁目)光晴会病院 院長  岡田 和也

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