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2022年6月6日 掲載

「おしりの悩みあれこれ」

痛みや出血、早めに相談を

 日本人の4人に3人は「痔(じ)主(ぬし)」といわれるほど、痔には多くの人が悩まされています。しかし、おしりの悩みは恥ずかしいという気持ちから、ネットでいろいろ検索して逆に悩みが増大することもあります。

 おしりの悩みは大きく分けると、痛み、出血、脱出の三つになります。
 まずは痛み。原因は切れ痔、肛門の周りに膿(うみ)がたまる肛門周囲膿瘍(のうよう)、肛門の外にできる血栓外痔核などがあります。切れ痔は、肛門の少し中が切れて痛みと出血を認める状態です。早期であれば軟こう治療と便通コントロールで治りますが、切れ痔を長年繰り返すと肛門が狭くなり、肛門を広くする手術が必要になる場合もあります。

 肛門周囲膿瘍は、肛門の周りが急に腫れて痛くなり、進行すれば高熱を伴うこともあります。また表面が腫れず、奥の方に膿が溜まる場合もあり、この時は診断が非常に困難です。治療は早期であれば抗生剤の内服で改善しますが、進行すれば切開して膿を出す必要があります。
 また、いったん症状が改善しても、肛門の中の肛門陰窩(いんか)と呼ばれる部位から細菌感染が起きているため、腫れを繰り返したり、常に膿が排出される痔瘻(ろう)の状態になった場合は痔瘻根治手術が必要になります。

 血栓外痔核は、急に肛門が腫れて痛みを伴いますが、肛門周囲膿瘍と違い、必ずしも手術は必要でなく、薬で根気よく治療すれば完治します。なお肛門の痛みは、長引く場合は痔ではなく、肛門がんの場合もありますので自己判断は禁物です。

 次に出血は、切れ痔や肛門の中にできる内痔核などがあります。内痔核は肛門の外に脱出するほど大きくなければ、ほとんどの場合、薬と、アルコールや刺激物を取り過ぎないなど生活習慣の改善で出血は治まります。しかし、排便時の出血は、直腸がんや潰瘍性大腸炎など他の病気の場合もあるため、薬の治療で改善しないときは注意が必要です。

 最後に脱出。肛門の外に触れるものは外痔核のこともありますが、皮膚のたるみである皮膚痔の場合も多いです。肛門の中からの脱出は、内痔核、肛門ポリープ、直腸の粘膜が脱出する直腸粘膜脱、直腸そのものが脱出する直腸脱など多彩です。治療法も脱出するものが何かにより全く異なります。脱出して指で戻さなければならない内痔核は切除する手術が必要ですが、講習を受け資格を得た医師であれば、術後の出血や痛みが少ないジオン注射療法(ALTA療法)でも治すことができます。

 このように、同じおしりの症状でもいろいろな病気がありますので、正確な診断をするために、肛門診だけではなく、肛門鏡、超音波検査、内視鏡検査などを組み合わせることが必要です。

 最近の痔の専門病院はプライバシーに配慮して、恥ずかしくないように、いろいろ工夫をしています。あれこれ自分で悩むより、怖がらないで早めに専門医に相談することが、悩みにさよならする早道です。

(長崎市江戸町)ながた大腸肛門クリニック 院長  長田 康彦

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