>>健康コラムに戻る

2022年6月20日 掲載

「男性更年期障害」

生活の質や就業に影響

 日男性更年期障害は主として50歳以上の中高年期にみられる疾患で、男性ホルモン(テストステロン)の低下に起因 します。これまでは取り上げられることが少なかったのですが、本疾患は生活の質や就業に影響することがあるため、近頃は積極的に治療を行う傾向にあります。

 【症状】自覚症状は大きく精神症状と身体症状に分類されます。精神症状としては 抑うつ イライラ 不安意欲の低下−など、身体症状としては 発汗 ほてり 睡眠障害 血圧上昇 性機能の低下− などが挙げられます。いずれも、それまで経験したことのない症状であり、その多くが日常生活を送る上で妨げとなります。

 【検査】血液中の男性ホルモンの低下が原因なので、実際の現場では血液中の「フリーテストステロン」という物質を測定して判断します。

 【その他の検査】更年期障害と間違われやすい病気として うつ病やアルコール依存症、神経症 動悸(どうき)や息切れなどを引き起こす循環器疾患 首、肩、腕のこりや痛みが起きる頸腕(けいわん)症候群、五十肩−などが挙げられます。このため症状に応じて、精神科医師や循環器科医師、整形外科医師に相談し検査を行う必要があります。

 【治療】男性ホルモンが低下していることが原因となるので、治療は男性ホルモンの補充を行います。「エナルモンデポー」という注射を行いますが、基本は2週に1回、肩または臀部(でんぶ)に筋肉注射します。必要に応じて投与量を増減します。注射はまず半年くらい行い、その後は自覚症状と男性ホルモンの値をみて継続するかを決めます。

 【治療薬の副作用】副作用として赤血球の増多や肝機能異常があるので、2〜3カ月に1度の血液検査が必要です。また、明らかな前立腺がんの患者さんは、がんを進行させる恐れがあり、注射を行うことは注意を要します。

 【その他の治療】症状が多岐にわたることが多いため、男性ホルモンの注射に加え、症状に応じて薬物を投与することがあります。漢方薬が著しく効くこともあり、患者さんの体質に合わせて内容を決めていきます。
 また、性機能の低下に対しても対応が必要なことが多いので、機能を改善させる薬物の投与も行うこともあります。

 【まとめ】男性更年期障害は、これまで見逃されていたり、生命を脅かすことがほとんどないために、軽視されたりする傾向にありました。しかし男性ホルモンの低下により、多くの症状がみられること、多くの患者さんがいることが分かってきました。少しでも該当するのではないかと思われる方は、専門の医師に相談してみるとよいと思います。

(長崎市鶴見台1丁目)原口医院 院長  原口 千春

>> 健康コラムに戻る