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2022年7月4日 掲載

「胃がんの予防」

健康増進やピロリ除菌

 皆さんは、胃がどのような内臓か、ご存じでしょうか?

 胃は袋状の器官で、みぞおちあたりにあります。口から入ってきた食べ物は、口の中でかみ砕かれ、食道を通って胃の中に運ばれます。胃の主な働きは、食べ物をある時間その中にとどめ、それを消化することです。胃は、入ってきた食べ物と、胃液や消化酵素を含む消化液とを混ぜていきます。どろどろのかゆ状になった食物は、胃の出口から、少しずつ、その先の消化管へ送り出されていきます。

 胃の壁は、内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜と呼ばれる層になっています。胃がんは、胃壁の内側を覆う粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。

 現在の日本では、がんは死亡原因の第1位です。2020年の部位別がん死亡数(厚生労働省)の統計によると、胃がんは男性で肺がんに次いで第2位、女性で大腸がん、肺がん、膵臓(すいぞう)がん、乳がんに次いで第5位の病気です。年齢別にみると、男女とも50歳台くらいから徐々に発生頻度が増えます。発生要因としては喫煙、高塩分食、ヘリコバクター・ピロリ菌感染などが挙げられます。

 胃がんは怖い病気だと思います。では、予防のためにはどのようにしたら良いのでしょうか? 1次予防(疾病の発生を未然に防ぐ予防)と2次予防(疾病を早期発見・治療し重症化を防ぐ予防)に分けて考えてみましょう。

 1次予防では、胃がんの発生要因を軽減するための健康増進(食生活や運動など生活習慣・環境の改善、ストレス解消、適正な飲酒や禁煙など)や特異的予防が挙げられます。特異的予防とは、特定の疾病を防ぐため自発的に行うことのできる予防対策のことで、胃がんではピロリ菌感染の除去(除菌)などがこれに当たります。

 ピロリ菌感染に関しては、ピロリ感染性胃炎(慢性胃炎)の除菌治療に対して保険診療が認められています。生活習慣の改善とともに、胃炎を伴うピロリ感染者はピロリ除菌を行うことが、胃がん発生の1次予防に大切だと思われます。

 がんにおける2次予防とは、定期的に検診を受けることにより、早期発見、早期治療を行うことで死亡を減少させることです。胃がんの場合、問診、胃部エックス線検査、胃内視鏡検査等を行い、早期発見、早期治療につなげるということになります。

 最近では、早期胃がんであれば、外科的に開腹をしなくても、内視鏡で切除を行うことができるようになりました。
胃を完全に残すことができるので、多くの場合、治療後の生活もこれまでと変わらない生活を送ることができます。一方、進行がんになると、外科的な手術(腹腔(ふくくう)鏡手術や開腹手術)や、抗がん剤治療を行うことになります。

(長崎市葉山1丁目)のりむらクリニック 院長  法村 大輔

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