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2022年8月15日 掲載

「子宮頸がん」

ワクチン接種、検診で予防

 子宮頸(けい)がんは子宮頸部に発症し、初期には自覚症状はほとんど認められません。日本では、毎年約1万1千人が子宮頸がんに罹患(りかん)し、約3千人の女性が亡くなっています。30歳から45歳までの女性に多いがんですが、最近では20、30歳代の比較的若い女性にも増えています。

 子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染がきっかけで、がんになる前段階の「前がん病変」を経て、長い年月を経て進行します。治療法には、手術療法、放射線療法、化学療法などがあり、がんの進み具合により適切な治療法が選択されます。

 一方、子宮頸がんは、がんの中では予防可能ながんの一つとして知られています。1次予防として、HPVワクチンの接種が効果的です。同ワクチンにより、子宮頸がんの原因となるHPVの感染を防ぐことができます。

 日本では、小学校6年から高校1年相当の女子を対象に同ワクチンの接種が提供されています。世界保健機関(WHO)は同ワクチンの接種を推奨しており、カナダや英国などでは、同年代の女子の約8割が接種を受けています。

 同ワクチンを接種すると、多くの方に接種を受けた部位の痛みや腫れなどの症状を認めることがあります。まれに、アレルギー症状や神経系の症状など、重い症状が出ることがあります。

 長崎大学病院は、同ワクチンの接種後に生じた症状に対応する県内の協力医療機関です。接種後の症状で心配なときは、接種を受けた医療機関に相談すると、診察結果の状況に応じて長崎大学病院へ紹介される医療連携体制が整備されています。

 また、子宮頸がんは「前がん病変」や「上皮内がん」の段階で早期発見であれば、治る可能性が高いです。2次予防として、20歳になったら子宮頸がん検診を定期的に受けることも重要です。子宮頸がん検診では、細胞の形を顕微鏡
で観察して、がん細胞だけでなく、がんになる可能性のある「前がん病変」を見つけることができます。

 精密検査で軽度から中等度の「前がん病変」であれば、HPV検査で原因となるHPVウイルスに感染しているのかどうかを判定して、その後の管理方針が決定されます。高度の「前がん病変」や「上皮内がん」であれば、病変のある子宮頸部を円すい状に切除して子宮を残す手術も選択できるので、将来に妊娠する可能性を残すことが可能です。

 子宮頸がんの予防には、HPVワクチンの接種(1次予防)と子宮頸がん検診(2次予防)が大切です。女性特有のがんであり、早期発見できれば治る可能性が高いことから、早いうちに「かかりつけの産婦人科」を見つけておくことをお勧めします。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院産婦人科 教授  三浦 清徳

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